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池上彰のこれ聞いていいですか?

ジャーナリストの池上彰さんが各界で活躍する人と対談します。

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向井千秋さん 「女性初」への違和感を経て今思うこと 次の夢は

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「宇宙は水や空気と同じような資源」と語る向井千秋さん=東京都新宿区の東京理科大近代科学資料館で2021年9月13日、長谷川直亮撮影
「宇宙は水や空気と同じような資源」と語る向井千秋さん=東京都新宿区の東京理科大近代科学資料館で2021年9月13日、長谷川直亮撮影

 今年、民間人に宇宙旅行の扉が開かれ始めたのを機に、ジャーナリストの池上彰さんが、宇宙飛行士として活躍した東京理科大の特任副学長、向井千秋さんと対談した。これからの宇宙との関わり方だけでなく、アジアで初の女性宇宙飛行士になった当時、「女性初」として注目されたことへの違和感も明かした。

今の夢は月周回ツアー

 池上 新型コロナウイルスの感染が広がっていますが、どんな生活を送っていますか。

 向井 基本的にはオンラインでの生活です。宇宙船に滞在した時を振り返ると、ほとんど地球との通信を基に仕事をしていたので、今とあまり変わらない気がします。コロナ禍は本当に大変ですが、それでも、例えばオンライン診療など今までできなかったけれど可能になったものがあればそれを加速させて、最終的に今までより得るものは多かった、となればいいかなという感じです。

 池上 ところで、最近はNASA(米航空宇宙局)だけでなく、米国のスペースXや、アマゾン・コム会長が創業したブルーオリジンといった民間企業による宇宙旅行が、ずいぶん出てきていますね。

 向井 宇宙は水や空気と同じように、地球上の多くの人が享受すべき一つの資源です。スペースXを率いるイーロン・マスクさんや、アマゾン会長のジェフ・ベゾスさんといった大金持ちの、いいお金の使い方だと思っています。彼らのお陰で多くの人に宇宙のことを知らしめることができて、みんながいつか宇宙に行ける世界につながるのではないでしょうか。

 池上 向井さんは今も夢はありますか。

 向井 年を取ってきましたけれど、できれば月に行ってみたい。着陸しなくていい。遊覧飛行だと1週間くらいで月の軌道を回って地球に帰ってこられます。月の裏側に回って、そこから見る地球が一番きれいだと思っています。

 池上 今はまだ人類が宇宙に出たくらいの段階ですが、やがて月周回ツアーの実現もあり得ますね。

 向井 はい。夢では私、フライトアテンダントの職に就こうと思っています。まだ私たちが月に行く時はツアー料金が高いでしょうから働きながら行けるのが一番。医師免許があって一応、飛行経験もありますから。

 池上 「向井千秋と行く月周回ツアー」とか。

 向井 そんなのがあると楽しいですよね。

日本の科学技術「大風呂敷を広げて」

 池上 東京理科大では、どういったことに取り組んでいるのですか。

 向井 将来の宇宙開発を担える人材育成と、宇宙での衣食住に関わる研究です。宇宙開発といえばロケットや人工衛星の開発が主で、小さい企業は投資しづらいですよね。

 だけど日本は宇宙飛行士の国際宇宙ステーションの滞在期間が米国やロシアに次いで3番目に長く、宇宙に滞在するための技術はすごく進んでいる。いわゆる地球低軌道に住むための衣食住です。リサイクルの分野も含めて何かやろうよって企業に呼びかけて、宇宙で培った技術を全部、地球で還元できるようにする。すると、かなりの企業が参入できるのではないかと思います。

 地球は有限じゃないですか。特に最近は地球温暖化で、意外と地球って壊れやすいんだと、若い人たちを含めて思い始めた。宇宙は、地球のいろいろな問題をリストアップして、限られた資源をいかに減らさずに使うかを考えるには、すごくいい空間ですよ。

 池上 日本の科学技術について触れざるを得ないかと思います。先日も評価の高い論文の数で、ついに中国が米国を抜いた。ランキングを見ると日本がどんどん下がっている。現状をどう見ていますか。

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