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養老孟司・評 『夢を見るとき脳は』=アントニオ・ザドラ、ロバート・スティックゴールド著、藤井留美・訳

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 (紀伊國屋書店・2420円)

「新たな知を発見する脳の働き」提示

 夢とはなにか。どこからどう生まれ、どんな役に立っているのか。著者はそうした疑問に導かれて、夢の研究を始める。最初に断っておくが十分な答えはまだない。夢に関する近年の科学研究の結果が著者の仮説を含めて丁寧にまとめて報告されるだけである。

 日本語の文脈では、「夢みたい」「夢のような」と表現されるように夢は現実にはほぼあり得ない、都合の良い理想的な状態を指すことが多く、「夢がない」や「夢を持て」「夢を果たす」のように「理想」に近い意味で用いられることも多い。夢を科学的に分析しても、夢のような結論が出るとはとうてい思えない。科学とはそういうものだ、という諦めが必要であるらしい。著者らは数千にわたる夢の報告を読み、さまざまな視点でそれを整理する。私ならとうていやる気にもならない作業である。

 夢に明確な定義はまだない。「夢か現(うつつ)かまぼろしか」と昔から言うくらいだから、寝ているときの脳の働きとでも言うしかない。著者は「夢とは睡眠中に出現する一連の思考、心象、情動である」と、とりあえずの定義から本書を始める。就学以前の子どもは夢と現実の区別がつかないという。学童期になると、夢は頭の中で起こることだと、たいていは理解するようになる。

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