「#記憶とつなぐ」46歳で認知症になった男性が写真に託す思い

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カメラを構える下坂厚さん。若年性認知症と診断された=京都市右京区で2021年9月9日午後5時42分、野口由紀撮影
カメラを構える下坂厚さん。若年性認知症と診断された=京都市右京区で2021年9月9日午後5時42分、野口由紀撮影

 2年前、彼は絶望の淵に立っていた。46歳で若年性認知症と診断され、ほどなく職場を去った。そんな男性が同じ認知症のある高齢者らの写真を撮るようになり、啓発ポスターやチラシに採用された。普段の生活でもカメラを構え、日常風景を写真共有アプリ「インスタグラム」に投稿する。そこに添えるフレーズが「#記憶とつなぐ」。「自分のキーワード」というその言葉に込めた思いを聞いた。【野口由紀】

同僚の名前も忘れ

 京都市北区に住む下坂厚さん(48)。2019年8月、65歳未満で発症する若年性のアルツハイマー型認知症と診断された。その年の春、長年勤めた鮮魚店を辞め、仲間と新しい鮮魚店を開いたばかりだった。

 異変は感じていた。注文をすぐに忘れ、10匹ずつパックするエビを数えるのに時間がかかる。朝5時から夜遅くまで働くせいだと思いたかったが、同僚の名前が思い出せないこともあったため、「もの忘れ外来」を受診。認知症だと告げられた時は「まさか自分が……」という思いでいっぱいだった。

 寝たきりになったり、外出したまま行方不明になったりするのではないか。ショックは絶望に変わり、「人生は終わった」と身辺整理を考えた。若手を育てる立場の自分が衰えていくのを見られたくないというプライドや、迷惑をかけたくないとの気遣いがあり、8月末に仕事を辞めた。

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