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入管・難民問題

国外退去処分になった外国人の入国管理施設での扱いが注目を集めています。難⺠に厳しいと言われる日本。人権は守られている︖

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「特別な存在ではない」 広がる難民への教育支援 民間にできること

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関西学院大で学ぶソーコーレさん=兵庫県西宮市で2021年6月16日午後3時、宮川佐知子撮影 拡大
関西学院大で学ぶソーコーレさん=兵庫県西宮市で2021年6月16日午後3時、宮川佐知子撮影

 さまざまな事情で母国を追われた難民らを対象に、大学や民間団体による教育支援が少しずつ広がっている。難民認定が厳しく、難民の受け入れが少ないとされる日本で、どう難民問題に向き合っていくべきか。奨学金を受ける学生を取材すると「特別視されたくない」と望む一方、多くの人に難民が置かれた状況を知ってほしいという複雑な心境が見えてきた。

「自分の国じゃない」と遠慮

 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は経済的理由などで大学進学が難しい日本在住の難民らを対象に奨学金制度を設けている。奨学生を受け入れる提携先は、制度が始まった2007年当初は関西学院大のみだったが、現在は全国各地の12校に広がっている。21年までに計約80人が制度を利用した。

 ミャンマー人のソーコーレさん(21)はこの制度を使って関西学院大の理工学部で学んでいる。

 最初に保護を求めた国から定住先として別の国に移る「第三国定住」の制度で、最初の避難国タイから10年に両親、弟3人と日本に渡り、関東・中部地方で小学校から高校までを過ごした。人生の半分以上を日本で過ごし日本語も流ちょうだが、常に「自分の国じゃないという遠慮がある」と話す。小学校時代は「日本人じゃない」と仲間外れにされた。いじめられても「悪いことをしたらミャンマーに帰されてしまう」とやり返したい気持ちを抑えた。就職活動を控え、「外国人の自分が日本で仕事を見つけられるだろうか」と不安を感じている。

 これまで同級生には「可哀そうと同情されたくない」と日本に来た経緯を積極的には話してこなかった。少数民族のソーコーレさん一家は、ミャンマーで住んでいた集落が攻撃されタイに逃れた。親族が暮らす地域の付近では最近もミャンマー国軍による空爆があった。「政治的意見の食い違いなどで紛争が起き、難民が生まれる。日本にいると想像しにくいかもしれないが、命からがらで逃げて来ている人がいることを知ってほしい」と訴える。いつかは母国に戻りたいといい、「日本で学んだことをミャンマーに伝えたい」と話した。

教育を受けて可能性広がった

 民間の事業でも難民への教育支援は少しずつ進んでいる。認定NPO法人「難民支援協会」(東京都)と公益財団法人「世界宗教者平和会議日本委員会」(同)は17年から、長期にわたる内戦で教育の機会を失ったシリア難民を留学生として受け入れる事業を開始。各地の教育機関の協力を得て、トルコにいるシリア人約30人が学費免除で日本語学校や大学で学べるよう支援してきた。

シリア人のスザンさん=本人提供 拡大
シリア人のスザンさん=本人提供

 関東地方に住む30代のシリア人女性、スザンさんはこの事業により18年に単身で来日。日本語学校を経て、現在は大学院で国際関係を専攻している。子どもの頃から日本文化に関心を持ち、日本語も熱心に勉強しているが、国籍を告げただけでアルバイトが不採用になったりと壁を感じることもある。大学院修了後の進路は決まっていないが、難民支援や女性の教育向上の啓発活動に携わりたいと願う。

日本語学校の習字の授業で書いた作品=スザンさん提供 拡大
日本語学校の習字の授業で書いた作品=スザンさん提供

 「私自身、教育を受けることによってさまざまな可能性が広がった。難民は決して特別な存在ではない。技術や能力があり社会の役に立ちたいと思う人も多く、活躍できる場を増やしていきたい」と話した。

 同協会の難民受け入れプログラム・マネージャーとして同事業に携わった折居徳正さん(52)=パスウェイズ・ジャパン代表理事=は「シリア危機を受けて、民間でできることはないかと思った」と振り返る。学生が孤立しないよう日本人との交流の場をつくったり、宗教など文化・習慣に関する相談に乗ったり、学業以外でもサポートを続けてきた。「紛争や迫害から逃れてきた人と日本社会がどう関わっていくか。理解を広げるきっかけになればいい」と話した。

欧米より桁違いに少ない受け入れ

 日本が難民に門戸を開いたのは、1975年のベトナム戦争終結がきっかけ。社会主義国となったベトナム、カンボジア、ラオスから「ボートピープル」などとして逃れてきた「インドシナ難民」の受け入れを特例で開始。法務省によると、2005年の終了までに1万1319人を受け入れた。

 81年には難民条約に加入し、翌年難民認定制度を導入。20年末までに難民認定申請8万5479件のうち841件を難民認定した。認定外でも人道上の配慮から2709件の在留を認めている。

 UNHCRによると、先進諸国での難民受け入れは、20年の認定件数がドイツ約6万3000人▽フランス、米国1万8000人▽英国9000人――と、日本の47人を大幅に上回る。各国の事情も異なり、単純比較はできないが、日本の難民認定は厳しいとされる。

 ただ、近年は難民が最初に保護を求めた国とは別の国に移って定住できる第三国定住の仕組みをアジアで初めて導入。10~19年にミャンマー難民194人が来日するなど、少しずつ受け入れを広げる取り組みも進む。

 UNHCRによると、紛争や迫害などで祖国を追われた難民は20年末時点で2450万人(ベネズエラからの国外避難を含む)。出身国は多い順に、シリア670万人▽ベネズエラ400万人▽アフガニスタン260万人▽南スーダン220万人▽ミャンマー110万人。ほかに国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)が支援するパレスチナ難民570万人がいる。【宮川佐知子】

【入管・難民問題】

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