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看護師が看護師をケア コロナ禍でストレス メンタル不調になる前に

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愛知県碧南市民病院で4月から開かれている院内保健室では、看護師長の岡田照代さんが看護師たちの相談に応じている=同病院で2021年8月27日午後2時30分、加藤沙波撮影 拡大
愛知県碧南市民病院で4月から開かれている院内保健室では、看護師長の岡田照代さんが看護師たちの相談に応じている=同病院で2021年8月27日午後2時30分、加藤沙波撮影

 新型コロナウイルス対策で発令されていた緊急事態宣言は解除されるが、感染「第6波」への警戒もあり、医療現場では気の抜けない日々が続いている。ストレスなどから来るメンタルの不調に対処しようと、看護師が看護師をケアする取り組みも広がっている。

 7月上旬、オンラインで開かれた講座「うつ病にさせないためのアドバイザー養成会」。15人ほどの受講者の大半が管理職を中心にした看護師だ。

 「スタッフの悩み事やメンタル不調を把握したくても、なかなか難しい」「コロナ禍で交流の場が持てず、仲を深めにくい」――。グループワークで参加者たちは、それぞれが職場内で感じる課題を口にした。看護師資格を持つ講師の時任春江さん(56)は「うつ病は自覚もなく発症するケースが多く、周囲からも気づかれにくい」と指摘。自律神経の状態を把握できる機器で、日常的にストレスを測ることの必要性などを説明した。

 「看護師たちは自ら感染できないため、コロナ禍ではずっと自粛が続き、リフレッシュができていない。メンタルヘルス対策は今や必要不可欠となっている」と時任さんは言う。自身も4人の子どもを育てながら名古屋市内の病院などで約25年にわたって勤務し、管理職の経験も長かった。「看護の仕事はやりがいはあっても大変で、いつも疲れ切っていた」

 自らの経験を生かそうと、退職後は看護師たちのボディーケアをする事業をスタートさせた。メンタルヘルスの研修会を開いたりする中で、自分の疲労に自覚のない看護師が多いことに気づいた。

 2016年2月に一般社団法人「日本疲労メンテナンス協会」を設立。看護師同士で交流し合えるカフェを開くなどしてきた。19年1月に発足させた「うつ病にさせないためのコンソーシアム」で講座を開設し、今年9月初めまでに受講した約500人のうち半数が看護師だという。

 愛知県医療介護福祉労働組合連合会が今年1~2月、県内で働く1487人の看護職員(うち96%が看護師)に実施したアンケートによると、コロナ下の業務で最もつらいこととして、37%が「精神的負担」、29%が「人員体制不足」と回答。精神的負担に関しては「自分や家族が感染することの恐怖」(28%)、「いつまでこの状況が続くのかという不安」(27%)の順だった。仕事を辞めたいと思うかとの問いには「いつも思う」が24%、「ときどき思う」が47%だった。

 19年に講座を受けた愛知県碧南市民病院の看護師長、岡田照代さん(56)は「メンタル不調は誰にでも起こりうるということを伝えていきたい」と、今年4月から看護師を対象にした院内保健室を始めた。同病院には約260人の看護師が勤務するが、仕事でのストレス以外にも職場の人間関係や家庭の問題などで悩み、退職や休職する人のほか、精神科を受診しながら勤務する人もいるという。

 コロナ禍では病床の使い方が変わり、専門分野以外の患者への対応も増加した。岡田さんは「治療内容も接し方も異なるため、慣れないことへのストレスは計り知れない」と指摘する。保健室ではストレスの度合いをチェックしたり、気軽にしゃべったりしながら、看護師の相談に乗る。

 岡田さんは8年前に夫を亡くした。同時期に職場が外来診療から病棟の看護師長へと変わった上、病棟の看護師の数が減るなど変化が重なり、メンタル不調に陥った経験がある。精神科医からは「休みなさい」と言われたが、「休んだところで目の前の課題は何も解決しない」と思っていた。しかし偶然、連休が取れたことで気持ちを切り替えられ、スタッフ同士で話す機会を積極的に作るようになると、職場の雰囲気は変わっていった。「話し合えたことがみんなの力になり、自分も楽になった」と振り返る。

 病院で働く看護師たちの離職率は毎年10%を超えるとされる。時任さんの元に、仕事量と比べて人手が足りないと訴えてくる看護師は多い。ただ、入院患者に対して必要な看護師数を示す国の配置基準があるため、病院単位で人員を増やすことはできないという。時任さんは「このまま看護師が疲弊し、辞め続けたら医療崩壊につながる。働き続けていくためには配慮が必要」と訴える。【加藤沙波】

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