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懐かしい味わいが魅力!昭和レトロな「固めプリン」再ブームの理由を探る

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【あの食トレンドを深掘り!Vol.20】90年代に流行した「ティラミス」、数年前に話題になった「おにぎらず」、直近では社会現象にもなった「タピオカ」など、日々生まれている食のトレンド。なぜブームになったのか、その理由を考えたことはありますか? 作家・生活史研究家の阿古真理さんに、その裏側を独自の視点で語っていただきました。

2000年代は「なめらかプリン」ブームが到来

プリンには、たくさんの思い出がある。

子どもの頃、お中元で送られてくる缶詰セットには、水ようかんとプリンが入っていた。水ようかんも好きだったが、プリンのカラメルで真っ茶色になった端っこを食べるのが楽しみだった。プッチンプリンの裏についている突起を押してお皿に載せるのも楽しみ。自分で作ることにもハマっていた。といっても、上手にできることはめったにない。カラメルを焦がし過ぎるか、その失敗を恐れて白っぽいまま容器に入れるので、市販品のようなビターで甘いサラサラの液体のカラメルにはならなかったのだ。プリン本体にすが入ってしまうことも多かった。

そのうち、モロゾフなどスイーツ店のプリンや、ゴージャスにフルーツなどが盛り合されたプリン・アラモードなんかも楽しむようになった。1人暮らしをしていたときには、風邪を引いたときによく買った。牛乳と卵が入っているから、食べたら早く回復しそうな気がするのだ。そうした思い出のプリンはどれも、固めでさっぱりしていた。

ところが2000年代に入ると、なめらかプリンが流行し、気がつけば売られているたいていのプリンが、生クリーム入りで味は濃厚だけど、スプーンですくうとすぐに形が崩れるもの一辺倒になってしまった。その流行はもしかすると、1992年頃にフランスのカスタードスイーツ、クレーム・ブリュレが流行し定着していたからではないか。生クリーム入りでトロリと柔らかいカスタードの魅力に、みんなハマってしまったらしい。

なめらかプリン流行の発信源は名古屋のパステルで、1993年発売。東京・恵比寿に進出したのが2000年代初頭。高級食パンブームからもわかるように、「口の中ですぐ溶ける」淡雪のような食感や、トロトロの料理をおいしいと思う人は多いのだろう。だから、なめらかプリンが東京、ひいては日本中を覆った。

最近のプリンのトレンドは、なめらかから「固め」へ

そういうプリンは今も健在で支持されているが、ここへ来て昭和レトロな固めプリンが流行している

今になって昭和プリンが流行るのは、最近、昭和テイストの喫茶店も人気で、そういうイメージで新たに開業する喫茶店もあるからか。喫茶店には固めプリンがよく似合う。

また最近は、食で何か流行すると、すぐに単品でフレーバーのバリエーションが展開される。プリンも専門店が東京や関西のあちこちに出現し、さまざまなフレーバーを売りにしている。

こうしたフレーバーの展開は、スターバックスコーヒーが日本にも定着し、トッピングを選ぶ楽しみを持つ人が増えたからかもしれない。高級チョコでも「ショコラティエ パレ ド オール」のようにフレーバーのバリエーションが人気の店もある。根強い人気を誇るサーティワンアイスクリームもフレーバーのバリエーションがウリだし、すっかり定着したマカロンもそう。そういうチョイスを楽しめることが、もしかするとちょっとした幸せをくれるのかもしれない

固めプリンの流行については、マリトッツォと似た要素が考えられる。つまりそれは、誰もが赤ちゃんの頃から親しんだ乳製品がもたらす安心感だ。どちらも味はシンプル。だからバリエーション展開をしやすいとも言える。

最近は、二度目のスイーツブームが到来しているらしく、一流パティシエの技が光る凝ったスイーツがどんどん生まれている。パフェも芸術的に進化している。高級チョコの世界も深まっている。そういうとんがった流行についていけないと感じる人はもちろん、たまには安心感のある定番スイーツも食べたい、という人も、昭和プリンなら楽しめる。言ってみれば故郷のような存在なのである。

プリンが日本に上陸したのは、明治時代。最初の中流層が都会生活を謳歌し始めた昭和初期にも、レシピが紹介され飲食店で提供され広がった。戦後、中流層の急拡大に伴って、大衆化が進む。

ハウスがインスタントの『プリンミクス』を発売したのが1964年。プッチンプリンの誕生は1972年。誰もが気軽に食べられる時代の到来だ。そうした時代にプリンを買った、作ったという祖父母世代と、そういうプリンを食べながら育った親世代、そして最初の世代の孫世代たちが、大人買いできるようになっている。

固めプリンの魅力が再発見されるのは、今が時代の変わり目だからかもしれない。時代は平成から令和に替わり、去年からは新型コロナウイルスが世界中で大流行し、私たちは日々の生活を大きく制限されている。自分の暮らしを見直している人も多い。

コロナ前を振り返ると、海外との交流は活発さを増し、海外旅行に気軽に行く人は珍しくなかったし、海外から旅行客が訪れる町も増えて、インバウンド需要に観光地や都会は沸き立っていた。SNSなどをきっかけとして、社交が活発になり、ビジネスの機会も生まれていった。人が活発に行き来し、ものすごい量の情報がものすごいスピードで行き交う。

そうした生活に疲れを覚えていた人も多いだろう。ステイホームで生活を再発見した人たちの中には、原点に戻って仕切り直そうとする人たちもいる。そうした気持ちの変化が、もしかするとプリンブームに表れているとは言えないだろうか。

画像提供:Adobe Stock


阿古真理(あこ・まり)

B7bdfa600542db2371cc4d487a7c3eab ©植田真紗美 1968(昭和43)年、兵庫県生まれ。作家・生活史研究家。神戸女学院大学卒業。食や暮らし、女性の生き方などをテーマに執筆。著書に『昭和育ちのおいしい記憶』『昭和の洋食 平成のカフェ飯』『小林カツ代と栗原はるみ』『なぜ日本のフランスパンは世界一になったのか』『パクチーとアジア飯』、『母と娘はなぜ対立するのか』、『平成・令和食ブーム総ざらい』、『日本外食全史』、『料理に対する「ねばならない」を捨てたら、うつの自分を受け入れられた。』など。

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