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毎日新聞朝刊1面の看板コラム「余録」。▲で段落を区切り、日々の出来事・ニュースを多彩に切り取ります。

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 「はばかりながらいわせてもらえば、官吏は凡庸(ぼんよう)の者でも勤まりますが、商工業者は相当に才覚ある者でなければ勤まりません」。これは渋沢栄一(しぶさわえいいち)が大蔵省を辞し、日本初の銀行を創業した当時の言葉である▲その「第一国立銀行」という名の「国立」は国法にもとづくとの意味で、あくまで民営である。「銀行」という言葉も「金行」や「銀舗(ぎんほ)」などの候補から栄一が選んだものだった。この銀行が今日のみずほ銀行の最も古い起源となる▲その銀行のシステム運営が金融庁という役所の管理下に置かれると聞いたら、「日本資本主義の父」である泉下(せんか)の栄一はどんな顔をするだろうか。システム障害が多発しているみずほ銀行に対して金融庁が異例の行政処分を発動した▲今年2~3月に相次いだ現金自動受払機(ATM)などの障害で顧客をあきれさせたみずほ銀行だった。その後6月に再発防止策を公表し、システム総点検を進めたはずが、先月から今月にかけても同じような障害がくり返されている▲それらの障害の検証すらもままならない現状に、金融庁が業を煮やしたかたちである。このままでは金融システムの安定への脅威になりかねないと見て、同庁の事実上の管理下でシステムの点検や改修を最優先に進めることになった▲合併前の旧行意識の壁が取りざたされるみずほ銀行だが、一昨年導入した新基幹システムも各旧行の取引先企業複数がその構築に関与した。「相当な才覚」もばらばらでは「凡庸」の管理下に置かれる。

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