「常総野菜」で恩返し 水害支援が縁で結婚・移住し農家に 茨城

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畑に立つ寺崎雄治さん(右)と、妻のまどかさん=茨城県常総市東町で 拡大
畑に立つ寺崎雄治さん(右)と、妻のまどかさん=茨城県常総市東町で

 6年前の関東・東北豪雨で大きな被害を受けた茨城県常総市で、県外から支援に訪れたことがきっかけで結婚したボランティアが農業に取り組んでいる。同市東町の寺崎雄治さん(38)とまどかさん(37)。常総で出会った人々や自然に魅了されたという雄治さんは、「安全でおいしい野菜を作り、『常総の野菜』をアピールしたい」と語る。【宮田哲】

 祝日の20日、自宅近くの畑で、雄治さんがまどかさんに作物の種類を教えていた。「あの辺りに植わっているのが京芋。葉っぱがしま模様になっているから」。頭上には、まどかさんが好きだという常総の広々とした空が続いていた。

 2015年の関東・東北豪雨。雄治さんは当時住んでいた横浜市から、まどかさんはさいたま市から市内に入り、浸水したTシャツプリント工場に定期的に通っては、大量のTシャツを片付ける作業に当たった。

 仲良くなったのは16年秋。雄治さんと親しくなった市内の農家男性の稲刈りを、工場に来るボランティアたちが手伝うことなった。そのまとめ役が、まどかさんだった。その後、2人で食事をするうちに、互いに「話をして楽しい」と感じた。2人は交際を始めると17年にはさいたま市で同居生活を始め、18年5月に結婚した。

 一方で、常総に通った日々は、雄治さんの生き方を変えていた。会社勤めをしてきたが、知人農家の稲刈りなどに参加し、自然に囲まれた仕事の楽しさを実感。「農業で生活できたら」という思いが高じた。なにより、常総の人々にほれてしまった。「被災しながらも顔を上げ、信念を持って生きていた。同じ街の人間になって、一緒に何かできたら」

 「おれ、農業をちゃんとやりたい」という雄治さんに、まどかさんも賛成した。まどかさんも常総での生活に憧れていた。「経済的には苦しくなるが、私が勤めを続けて支えればいいと考えた」と振り返る。

 常総市役所の紹介を受け、19年4月に畑付きの空き家に移り住んだ。農村集落に溶け込めるかという不安も、集落で開かれた歓迎会などで消えていった。住民らは「畑で何を作るんだい?」と親しげに声をかけてくれた。

 移住後、雄治さんは市内の農家で研修を受け、合間に自ら借りた畑を耕した。耕作面積1000平方メートルから、現在は5000平方メートルに。今春、研修を終え「寺こや農園」の名でつくば市内の農産物直売所2カ所に野菜を納めている。「子供が安心して食べられるものを届けたい」との思いから、寺こや農園の野菜に、化成肥料や化学農薬は使わない。

 まどかさんは在宅のシステムエンジニア。平日は雄治さんと同じ午前5時半に起きて食事を作り、休日は農業を手伝い、車を運転して納品する。雄治さんは「支えてもらっている」と感謝する一方で、まどかさんは「会話の半分は農業のこと」と笑う。タイミングをみて、まどかさんも農業に専念するつもりだ。

 雄治さんはこの6年間を振り返って言う。「ここまでこられたのは、常総で出会った人たちのおかげ。少しでも『常総の野菜』をアピールし、恩返しできればうれしい」

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