柏崎刈羽原発のテロ対策報告書 地元「東電、変わっていない」

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東電の検証報告書に物足りなさを感じたと話す桜井市長=新潟県柏崎市役所で2021年9月23日、内藤陽撮影 拡大
東電の検証報告書に物足りなさを感じたと話す桜井市長=新潟県柏崎市役所で2021年9月23日、内藤陽撮影

 東京電力が柏崎刈羽原発(新潟県)で相次いで発覚したテロ対策の不備に関する報告書を原子力規制委員会に提出したことを受け、同原発の地元関係者からは内容に対する厳しい見方が示された。「分析が甘い」といった指摘のほか、「東電は何も変わっていない」などと改めて原発事業者としての資質を疑問視する声が上がった。【内藤陽、露木陽介】

 東電が22日公表した報告書は、東電社員が他人のIDカードで中央制御室に不正入室▽侵入検知設備が長期間故障していたのに十分な代替措置を取っていなかった――という二つの事案の原因や背景を分析し、改善計画を提示。主な原因として核物質防護に対する認識の甘さや、上層部が現場の実態を把握していなかったことなどを挙げた。

 報告書の公表を受けて23日に記者会見した柏崎市の桜井雅浩市長は「考察が甘い」と苦言を呈した。

東京電力柏崎刈羽原発。並び順の詳細は手前から5号機、6号機、7号機、奥側手前から4号機、3号機、2号機、1号機=新潟県柏崎市、刈羽村で、本社機「希望」から 拡大
東京電力柏崎刈羽原発。並び順の詳細は手前から5号機、6号機、7号機、奥側手前から4号機、3号機、2号機、1号機=新潟県柏崎市、刈羽村で、本社機「希望」から

 二つの事案に共通する根本原因を「直接」「背後」「深層」に分けて導き出した結論と改善計画について「分析自体は正しいが、果たしてそうだろうか」と疑問視。福島第1原発事故とその影響も踏まえ「根底にあるのは原発は潜在的に大きなリスクを抱えた発電方法との意識の希薄化と、国に支えられている会社であるとの認識不足だ」と指摘した。

 東電は福島事故後、柏崎刈羽原発の核防護設備のリース・保守契約を見直して自社設備に切り替えた。これが核防護設備の不備につながったとの見方もあり、桜井市長は「コスト削減の狙いもあったのではないか。それを認めてほしかった。(東電の説明は)根底にあるものを提示していない」と述べた。

 報告書には東電社員4000人を対象にしたアンケート結果も盛り込まれた。「経営層に費用が高い、仕事のスピードが遅いと怒られた」「安全最優先と言いながらコスト削減や工程順守が横行していた」といった声が提示され、桜井市長は「現場の気持ち」と受け止めたという。

 また、原子力部門を統括する「原子力・立地本部」を東京の本社から新潟に移転する東電の計画については歓迎する意向を示した。

 反原発団体「柏崎刈羽市民ネットワーク」の竹内英子代表(52)は、報告書や東電の説明に「東電は何も変わっていない」との印象を抱いたという。「経営陣は『最後の機会』『生まれ変わる』などと大げさな言い方をしていたが、不祥事の度に言ってきたことと変わらず、違う言い方をしているだけだ。また同じことが繰り返されるのではないか」と危惧を示した。

 「社内の『安全文化醸成』という改革は過去の不祥事の度に実行してきたはず。その中身と今回の事案との関連について分析が深められていない」。立石雅昭・新潟大名誉教授(地質学)も批判的な見方を示した。

 また、同原発は再稼働が見通せない中で膨大な資金が注がれていることから「経営と将来の見通しを考えたときに『廃炉にする』と宣言するのが本来の責任の取り方だと思う」とも述べた。

 立石教授は再稼働の可否を判断する根拠となる県独自の「三つの検証」の技術委員会で3月まで委員を務めていた。報告書は今後、同委員会でも議論され「東電が核防護を担うだけの力量があるのかという部分まで踏み込んで議論してほしい。県や立地自治体は原子力規制委員会に任せるだけでなく、この改善策が実施されることを最後まで見届けるべきだ」と語った。

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