乗り合いタクシー高齢者に好評 兵庫・西脇市が地域交通見直し

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片山象三市長(右)から乗車1万人目の記念品を贈られた和田延代さん=兵庫県西脇市鹿野町の市コミュニティーセンター比延地区会館で2021年9月15日午後3時0分、阿部浩之撮影 拡大
片山象三市長(右)から乗車1万人目の記念品を贈られた和田延代さん=兵庫県西脇市鹿野町の市コミュニティーセンター比延地区会館で2021年9月15日午後3時0分、阿部浩之撮影

 自宅近くまで迎えに来てくれる乗り合いタクシーを兵庫県西脇市が4月に導入したところ、お年寄りを中心に需要がうなぎ登りで、市が想定した倍の早さで15日には利用者が1万人に達した。市は健康で生き生きと暮らせる地域社会を目指しており、乗り合いタクシーをお年寄りの外出を促す重要な柱に位置づけている。利用が低迷していた地域交通を見直し、市民ニーズを徹底分析したことが需要の掘り起こしにつながった。

 市は3月まで市内でコミュニティーバスを運行していたが、便数が少なくバス停も遠いことなどから利便性が低かった。

 市の調査(2017年)では、車を利用できない人ほど外出は少なく、高齢者の4割超が「(家族に)送迎してもらうのが大変」「目的地に行く鉄道やバスがない」と回答。どの地域がバス停まで遠く利用しにくいかも調べ、交通弱者が問題を抱えている実態を具体的に把握した。

スロープがあり、車椅子に乗ったまま簡単に乗車できる=兵庫県西脇市鹿野町の市コミュニティーセンター比延地区会館で2021年9月15日午後2時27分、阿部浩之撮影 拡大
スロープがあり、車椅子に乗ったまま簡単に乗車できる=兵庫県西脇市鹿野町の市コミュニティーセンター比延地区会館で2021年9月15日午後2時27分、阿部浩之撮影

 市は、高齢化率が約20年後に40%超となると予想されていることから、19年に「市地域公共交通網形成計画」を策定し、交通体系を抜本的に見直すことにした。民業圧迫を避けるため、地元のバス・タクシー会社、警察署などでつくる公共交通会議とも協議した。

 目玉は乗り合いタクシー車両「むすブン」(乗客4人乗り)の導入で、病院やスーパー、銀行などがある市街地の「相互乗入区域」に、市北部、南部どこからでも行けるデマンド型交通体系にした。

 乗車1時間前までに市役所にある予約センターに電話をすると、近所の公民館やごみステーションまでタクシーが来てくれる。目的地は、市が事前に行き先登録している施設を指定すれば、近くまで行ける。帰りも同様に予約して来てもらう。

 乗車1回の利用料は65歳以上が200円、中学生以上64歳以下が400円など。市が委託したタクシー会社2社が平日は午前7時半~午後5時半、土曜は午前8時半~午後0時半に5台を運行している。導入に伴い、既存のコミュニティーバスは廃止や減便したり、市街地のルートを循環型に切り替えたりした。

 むすブンは車椅子ごと楽に乗ることもでき、4月に940人だった乗客は8月に3倍近い2672人に。

 短歌の会に出席するため利用し、1万人目になった同市蒲江(こもえ)の和田延代さん(85)は「趣味の会への参加も病院通いもすべてむすブンに頼っている。よく外出するようになった」と実感を込めて話した。片山象三市長は「お年寄りに気軽に外出してもらう狙いで始めたが、予想以上」という。

 周辺自治体からの視察も相次いでおり、計画を進めた市次世代創生課の徳岡和秀課長は「日本での公共交通は『民間が手がけて黒字にするもの』との考え方が支配的だったが、西脇市の新計画では『公共交通はインフラ(社会基盤)で、公共事業の対象』とする欧州の考え方を取り入れた」といい、「現状分析をしっかり行い、地理的特性なども考慮してこの地に合った交通体系は何かを追求した」と見直しのポイントを語った。

 市は社会や地域の情勢変化に合わせて計画を定期的に見直す。【阿部浩之】

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