連載

水車小屋のネネ

物語の主人公は、小学3年生の律とその姉で18歳の理佐。冷淡な親から逃げて山あいの町にたどり着き、隣人らに見守られながら大人になっていく――。

連載一覧

水車小屋のネネ

/70 津村記久子 画 北澤平祐

  • ブックマーク
  • メール
  • 印刷

 見たところ、提案する一人一人に独自の歌いたい曲があるらしく、とりまとめるのは大変だろうなと理佐は活発な意見交換を眺めながら考えていた。

 ひとしきりそれぞれの曲名が出た後、真壁さんは腕組みをして黒板を見渡し、これ、投票とかしても絶対割れますよね、と険しい顔で言った。

「申し訳ないですけど、ここ五年のうちに他の婦人会が歌った曲も調べて、それを省いたリストを作成し、それを来週配布しまして、そこでの投票の上で曲を決めるのはどうでしょうか?」

 えーじゃあ私のだめじゃない、とハイドンの曲を提案した木梨さんは異議を唱えるのだが、さして残念でもなさそうだった。というか来週も会合やるんですか? 二週に一回なのに? と誰かから声が上がって、真壁さんは、申し訳ありませんが、とうなずく。困るなあ、という声が上がったかと思うと、また別のところで、でも楽譜の調達もあるし、ある程度早く決めないとだめだよ、と誰かが諫(いさ)める。

この記事は有料記事です。

残り503文字(全文908文字)

あわせて読みたい

この記事の特集・連載
すべて見る

注目の特集