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パリの下水道は14世紀のペスト、ロンドンの下水道は19世紀のコレラの流行を契機に整備された。明治期に日本で上水道が普及したのも幕末からのコレラの流行が影響したそうだ。感染症から身を守る努力が社会や技術の変革を促したわけだ▲2003年の「重症急性呼吸器症候群(SARS)」の流行では、各地の空港に体温測定カメラが導入された。コロナ禍は人工知能(AI)を使った顔認証技術を市中に広げるきっかけになっている▲デパートや大型店の入り口で、画面に体温を表示する装置をよく見かける。顔認証技術が使用され、客のおでこの温度をピンポイントで計測する。複数の客の体温を表示できる装置もある▲中国やシンガポールの企業は体温の高い個人を特定し、追跡できるシステムまで開発している。体温測定という日常的な行為が監視カメラのような役割を果たすとすれば気持ちが悪い▲JR東日本は不審者を検知する防犯カメラの利用を始めた。過去に駅や列車内で犯罪を起こして服役し、出所した人も対象に含めていたが、問題があるという指摘を受けて対象から外したという▲無人コンビニや「顔パス」での各種手続きなど便利なサービスへの利用も期待されるが、急激な技術の進歩に社会の意識や制度が追いついていない。国連からも人権に深刻な脅威をもたらす危険性があると顔認証技術利用のモラトリアム(一時停止)を求める声が出ている。ここは立ち止まって功罪や法規制のあり方を熟議すべき時か。