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裁判封じた送還「違憲」 人権無視した入管を糾弾

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 難民認定を求めた外国人に裁判を起こす機会を与えないまま強制送還した入管の対応について、東京高裁が違憲判決を出した。

 7年前、難民と認めない決定を告知した翌日に、スリランカ人2人を送還していた。判決は、憲法32条が保障する「裁判を受ける権利」を侵害したと判断した。

 行政の強制措置に対し、市民が司法の判断を求めることは、自由や権利を守るために欠かせない。実際に裁判で入管の処分が取り消され、難民認定された例もある。

 これを封じた入管の措置は人権を無視するもので、判決が厳しく糾弾したのは当然だ。

 入管法は国外退去処分を受けた外国人について、入管による難民認定の審査中は送還を停止すると定めている。裁判中の人も送還しない運用がなされている。

 今回の強制送還は、この間隙(かんげき)を突いて行われた。2人に告知する40日以上も前に難民不認定を決定していたにもかかわらず、それを伏せて送還の準備を進めていた。

 判決は「送還を確実に実施するため、意図的に告知を遅らせた」と認定した。入管の主張を認めて違法な対応ではないと判断した1審判決を覆した。

 送還を急ぐのは、退去処分を受けた人が入管施設に長期間収容されている実態があるためだ。入管は、送還を免れる目的で難民認定申請を繰り返す人がいると強調している。

 しかし、身に危険が及ぶ恐れがあったり、日本に家族がいたりして、帰国できない人が多い。そもそも日本の難民認定は、世界的に見ても厳しい。

 同様のケースは他にもある。名古屋高裁は今年1月、違憲とは踏み込まなかったものの、国に賠償を命じる判決を出している。

 上川陽子法相はきのう、難民不認定の告知から送還まで原則2カ月以上空けるように、6月以降、運用を変更していると明かした。

 だが根本的な問題は、在留資格のない人を日本社会から排除する入管のかたくなな姿勢だ。施設収容中のスリランカ人女性が死亡した問題で、遺族に誠実に向き合わないことにも表れている。

 国は違憲判決を重く受け止めて猛省し、人権を尊重する体制に改めなければならない。

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