山里の魅力、身体アートで表現 シイタケ小屋を舞台に発信 埼玉

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身体表現するTOMONORI MURAOKAさん。旧シイタケ小屋に舞台を作った=埼玉県小鹿野町で、山田研撮影 拡大
身体表現するTOMONORI MURAOKAさん。旧シイタケ小屋に舞台を作った=埼玉県小鹿野町で、山田研撮影

 武術の動きを取り入れた身体表現、マーシャルアーティストのTOMONORI MURAOKA(村岡友憲)さん(34)が19日、埼玉県小鹿野町河原沢で公開パフォーマンス「山に、生きる。」を開いた。会場は、自身の祖父が生前、生産に取り組んだシイタケ小屋。ありのままの小鹿野の魅力をアートで発信する試みだ。【山田研】

 「山に、生きる。」は、小鹿野高在学中に日本百名山の一つ、両神山(小鹿野町・秩父市、標高1723メートル)に登り、カモシカに遭遇した村岡さんの実体験を基に製作、演出。屋根も一部抜けるなど荒れ果てたままだった約300平方メートルの小屋を、村岡さんが約1カ月かけて改修した。土間にした中央部分に板で舞台を作り、入り口側を客席として椅子を並べた。奥の部分には伸び放題の雑草をあえて残した。

 この日は木で作ったカモシカだけを置いた舞台に一人で立ち、サーカスやコンテンポラリーダンス、アクロバットの動きも取り入れて演じた。小鹿野の自然や動物と人との共存をテーマにした身体表現。約20分の間に舞台背後に見える谷の下手側に日は落ち、空と上手側の谷の木々がうっすら赤く染まった。「木も草も何もかも自分らしく育ち、美しい」と感じる自然の中の舞台ならではだ。

 深谷市生まれの村岡さんは高校時代、町内でも山深い祖父の家で暮らした。卒業後、アクション俳優やスタントマンなどが所属する芸能事務所で基礎を勉強。東京を活動拠点に、テレビ番組や新作歌舞伎、海外での舞台に出演するほか、アイドルグループのアクション指導も務める。

 「夢だった」という、世界的に人気のサーカス劇団「シルク・ドゥ・ソレイユ」の米ラスベガス公演で2020年6月にデビュー予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大で中止に。その後、実家に住むおじの体調が悪化して週末に小鹿野に通ううち、屋根が朽ちた小屋の中いっぱいに伸びた雑草を見て「人が作った小屋は簡単に壊れるが、こんな環境の中でも新しく生まれ、力強い。その姿が美しい」と直感した。

 「壊すのは誰でもできるが、おじいちゃんや地域の人が望むのは手を加え続けることでないか。僕がやるのはシイタケ(栽培)ではない。僕にしかできないことは何だろう」と考えて浮かんだのが、この土地になじむように演じ、地域の人に喜んでもらうことだったという。

 終演後、公演資金をインターネットで募るクラウドファンディング(CF)出資者と来場できなかった住民向けの映像を撮影。さらに、観客を舞台上に招くと、子どもがカモシカ像に触り、遊んでいた。CFの1人を除けば近所の高齢者をはじめ来場者は町民ばかりで20人に満たなかったが、うれしそうに話しかけられ、記念撮影した。「こういうエンターテインメントがやりたかった」とほほえむ村岡さん。そして「ここを小鹿野の子どもたちの発表の場にできればいい。土地の方に受け入れられれば、僕もまた出たい」と語った。

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