「アフガンのこと忘れないで」 窮地に立つ現地女性への支援訴え

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アフガニスタンの女性による刺しゅう作品を手にする「エジャード・ジャパン」の筒井百合子さん=大阪府豊中市で2021年9月9日午後3時24分、宮川佐知子撮影 拡大
アフガニスタンの女性による刺しゅう作品を手にする「エジャード・ジャパン」の筒井百合子さん=大阪府豊中市で2021年9月9日午後3時24分、宮川佐知子撮影

 アフガニスタン人男性の日本留学がきっかけとなってできたアフガン人女性を支援するプロジェクトが、イスラム主義組織タリバンの復権で窮地に立たされている。2018年から刺しゅう製作を通じて、厳しい生活を強いられるアフガンの女性を支援してきたが、男性は政府機関の仕事を失い、女性たちが手がけた刺しゅう作品を日本に送ることもできなくなった。男性は「日本の人にはアフガニスタンのことを忘れないでほしい」と支援を呼びかけている。

タリバンの首都制圧で一変

 男性は15年に来日し、大阪大大学院で経済政策を学んだ「アブドゥル」さん(31)=カブール在住。在学中、国際交流イベントで大阪府豊中市の筒井百合子さん(65)と知り合ったことがきっかけとなり、知人ら数人とボランティアでプロジェクト「エジャード」を始めた。アブドゥルさんが現地代表を務め、筒井さんが「エジャード・ジャパン」(豊中市)代表として日本側の窓口役を担う。

 アフガンでは長年続いた紛争や、1990年代後半からの旧タリバン政権の極端なイスラム教解釈に基づく統治の影響で女性は教育や就労の機会を制限されてきた。01年の旧政権崩壊後は女性の地位向上が掲げられたが、慣習や貧困なども影響して社会参加はあまり進んでいない。現在でも父や夫ら男性の家族が働けなくなると、女性は収入が絶たれて困窮してしまうことが多いという。

アフガニスタンの女性による刺しゅう作品=大阪府豊中市で2021年9月9日午後3時25分、宮川佐知子撮影 拡大
アフガニスタンの女性による刺しゅう作品=大阪府豊中市で2021年9月9日午後3時25分、宮川佐知子撮影

 そのため、エジャードの活動では、伝統的に母から娘に伝えられてきた刺しゅうの技術を生かし、女性たちの作品を日本やサウジアラビア、ニュージーランドなど国外で販売することで経済的自立を後押しする。アブドゥルさんが現地の女性と世界各地の支援メンバーとをつなぐ核となる。エジャードは現地主要言語のダリ語で「新しい創造力」を意味する。困窮する女性を助けるだけではなく、その先の夢への挑戦を応援するとの意味を込めているという。

 アブドゥルさんが帰国して本格的に活動を始めた18年から、カブール周辺に住む20~30代の女性約20人を支援してきた。最近はメンバーが安心して集まることができ、技術や識字教育を受けられる拠点施設の開設に向け準備を進めていた。しかし基礎工事が始まって間もなく、タリバンが首都を制圧した。

 アブドゥルさんはガニ政権崩壊前まで政府の財政部門で税政策を担当していたが、「国外留学経験者は疑いの目を向けられ、活躍の機会はないだろう」と職場を離れた。自身や家族には今のところ、危険は及んでいないが、「タリバンは何をするか分からない」と不安を募らせる。

 街中でのテロや誘拐などの犯罪は減り、「以前より安全になった」と感じることもあるが、政情不安による混乱で仕事を失った人も多く、「今の経済状態が続けば、仕事のない若者が過激派グループに加わるなどして治安が悪化するのではないか」と懸念する。

「産業の発展に力貸して」

 メンバーの女性たちは、リーダーを通じ全員の無事を確認した。今回の暫定政権で再び女性への抑圧が強まる恐れもある。さらに、家族の失業や食料品の値上がりで生活は苦しくなっており、これまで以上に女性たちへの支援は必要になっているが、作りためた刺しゅう作品を日本に輸送することすらできない状態だ。

「エジャード・ジャパン」の筒井百合子さん=大阪府豊中市で2021年9月9日午後3時27分、宮川佐知子撮影 拡大
「エジャード・ジャパン」の筒井百合子さん=大阪府豊中市で2021年9月9日午後3時27分、宮川佐知子撮影

 「この国にはまだ生活に必要な水を確保できなかったり、教育を十分に受けられなかったりする人はたくさんいる。国の発展に貢献したいと思っていたが、自分はもう役に立たない」。アブドゥルさんは無念さをにじませながらも、今後は農作物のビジネスで生計を立て直すつもりだ。先行きは見通せないが、「民間人として子どもや女性が学べる環境を作っていきたい」と希望を持つ。

 日本に対しても期待は大きい。「これまでアフガニスタンを支援してきた日本を『本当の友達』と思っている人も多いはず。経済制裁ではなく、産業の発展に力を貸してほしい」と訴えた。

 筒井さんは「活動を通じて、アフガニスタンの人たちに寄り添っていきたい。母国のために力を尽くしたいと思っている若者が活躍できる社会になってほしい」と話した。

 エジャードはインターネットのクラウドファンディング(https://congrant.com/project/ejaad/3422)で施設の建設費や女性の生活支援のための資金を募っている。10月9日まで。同5日までは大阪府箕面市の複合施設「about her.(アバウトハー)」で刺しゅう作品の展示販売がある。【宮川佐知子】

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