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自民総裁選と外交政策 難局打開の姿勢が見えぬ

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 米中対立下でどう日米同盟を強化し、日中関係を安定させるか。韓国や北朝鮮、ロシアとの関係を改善する策はあるのか。新型コロナウイルスや気候変動への対応でいかに国際協調を主導するか。

 山積する外交課題をめぐり、自民党総裁選で議論が交わされている。関心を引くのは中国問題だ。

 高市早苗前総務相は中台有事を想定し、中距離ミサイルを配備するなど対処能力の向上を訴える。「力の外交」である。

 野田聖子幹事長代行は人権問題を批判しつつ、軍備増強よりも非戦の理念を追求する。いわば「ソフト外交」だ。

 ともに外相を経験した河野太郎行政改革担当相と岸田文雄前政調会長は硬軟おり交ぜた「現実外交」と言えよう。

 河野氏は日米による抑止力強化に力点を置き、岸田氏は法の支配などの価値観外交を前面に出す。対話を重視する姿勢は共通する。

 対話の余地を狭めて力を誇示すれば、緊張の高まりに抑えがきかなくなる。

 かといって、力を蓄えないままに友好的な振る舞いを期待するだけでは、足元を見透かされる。

 「圧力と対話」という外交の要諦を押さえつつも、前に動かす具体策がなければ意味がない。

 4氏の主張にはそれぞれ補うべき点があるが、共通しているのは、難局を打開しようとする意欲的な姿勢がうかがえないことだ。中国にどう対抗するかに議論が終始していないだろうか。

 日中関係が再び冷却化する中、菅義偉首相はこの1年、中国との距離を縮めようとしなかった。内向き思考を脱する必要がある。

 ワシントンで開かれた日米豪印4カ国(クアッド)首脳会議は、中国をにらんだ安全保障協力の強化で合意した。

 だが、これに先立ち米英豪が創設した新たな安全保障の枠組み「オーカス」にフランスが反発し、同盟に亀裂が入った。

 中国は、日本が主導し、米国が不参加の環太平洋パートナーシップ協定(TPP)への加入を申請し、日米を揺さぶる。

 複雑さが増す国際情勢の中で求められるのは、重層的かつ複眼的な外交だ。総裁選でその構想を示し、議論を深めてほしい。

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