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水車小屋のネネ

物語の主人公は、小学3年生の律とその姉で18歳の理佐。冷淡な親から逃げて山あいの町にたどり着き、隣人らに見守られながら大人になっていく――。

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水車小屋のネネ

/71 津村記久子 画 北澤平祐

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「妹さん、本当に大丈夫なの?」

「え?」

「あなたに気を遣ってお母さんに会いたいって言わなかったりするっていうのは考えてみたことない?」

 小さな声でそれだけ言って、園山さんは回れ右をして自分の席へと向かっていった。理佐は、たぶん違うと思うけれども自分は律ではないからこの人の言うことを完全に否定することはできないし、高校を出たばかりの小娘が十歳下の妹と二人暮らしをしてるってことで自分を訝(いぶか)る人もやっぱりいるよな、と複雑な気持ちで浪子さんの隣に着席する。

 会長の真壁さんは、黒板に、蘇州夜曲、エーデルワイス、荒城の月、僕とフリオと校庭で(ポール・サイモン)、アヴェ・ヴェルム・コルプス、と大きな字で書き、絞りました! と指さした。

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