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犬が西向きゃ

国際報道に優れたジャーナリストに贈られる「ボーン・上田記念国際記者賞」を受賞した、高尾具成編集委員のコラム。

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犬が西向きゃ

大海原を渡る知恵と誇り=高尾具成

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 飼い犬に「道案内」を受けることが度々ある。嗅覚や聴覚と場所を結びつけた記憶に加えて、地磁気や太陽、星の位置などを感知しているともいわれる。サケや渡り鳥――生物に組み込まれた能力には頭が下がるばかりである。

 さて人間はどうだろうか。海図や羅針盤も使わずに、星や潮流、島と波のうねりの関係性などを頼りとした航海術が600以上の島々からなるミクロネシア連邦に伝わるという。園田学園女子大(兵庫県尼崎市)に展示されているヤップ州マープ島の伝統的な一枚帆の外洋帆走カヌー「ペサウ号」(全長11・5メートル、帆柱7・1メートル)は、そのいにしえからの航海術を証してみせた実物だ。建造に約2年。「タマナ」という樹齢100年ほどの大木を手斧(ちょうな)でくりぬいた船体に、50以上もの部材をヤシの繊維で編んだロープや樹液を混ぜた接着剤で固定し、片脇には安定性を保つ浮きアウトリガーが張り出している。

 1986年夏、帆のかえしと踏み舵(かじ)だけの航法で、10人を乗せたペサウ号は、マープ島から小笠原諸島・父島(東京都)までの約3000キロの航海を1カ月かけて成功させた。「カヌーの建造法も航海術も知る人が少なくなりました。伝統が途絶えないよう海洋民族の誇りを伝えるためにも日本への航海を実現したい」。マープ島の元総酋長(しゅうちょう)、ベルナルド・ガアヤンさんのそんな夢を聞き、国際交流をする園田学…

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