取引履歴確認困難な版画 文化庁がブロックチェーンでの管理検討

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警視庁が押収した東山魁夷らの原画を基にした偽版画=東京都中央区の警視庁築地署で2021年9月27日午後2時22分、柿崎誠撮影 拡大
警視庁が押収した東山魁夷らの原画を基にした偽版画=東京都中央区の警視庁築地署で2021年9月27日午後2時22分、柿崎誠撮影

 日本画家の東山魁夷(かいい)の偽版画を作製したとして元画商ら2人が著作権法違反の疑いで警視庁に逮捕された事件。

 有名絵画を基にした版画は、同じ作品が多数流通している。枚数は限定されているものの、値段は数十万~数百万円で原画よりも安く、美術ファンに人気がある。一方、版画の取引履歴の確認は難しく、真作と偽物を判断するのは専門家でも簡単ではないとされる。版画業界関係者は「販売する百貨店も美術商を信頼して作品を仕入れているのが実態」と明かす。

 こうした現状を踏まえ、先端技術「ブロックチェーン」(分散型台帳)を使って取引履歴を管理し、偽物の売買を防ぐ仕組みが始まっている。ブロックチェーンは、インターネット上の複数のコンピューターでデータを共有する技術で、分散管理のため、データ改ざんが困難という利点がある。

IT関連会社「スタートバーン」が開発したシール型のICタグ。額縁の裏に貼られている=東京都文京区で2021年9月15日午後0時34分、柿崎誠撮影 拡大
IT関連会社「スタートバーン」が開発したシール型のICタグ。額縁の裏に貼られている=東京都文京区で2021年9月15日午後0時34分、柿崎誠撮影

 IT関連会社「スタートバーン」(東京)は絵画や版画に貼り付けるシール型のICタグを開発。このタグをスマートフォンにかざすと、ブロックチェーンで共有している作家や作品名、制作年、取引履歴などのデータが表示される仕組みだ。データ登録の際は、著作権者への確認を徹底するため虚偽登録はできない。また、不正な貼り替えを防ぐため、シールをはがすとタグの機能が失われる構造になっているという。

 文化庁も2022年度予算の概算要求に、ブロックチェーンを使った美術品の適正管理などを目的とした新規事業費5000万円を盛り込んだ。

 文化庁は有識者会議を設置し、民間のICタグ事業やデータベースなどの共通化を検討するほか、統一した鑑定指針の策定なども進める方針だ。担当者は「作品の透明性が高まれば、結果的に偽物は市場から排除され、市場が活性化されるのでは」と話す。

 美術品の管理などに詳しい岡本健太郎弁護士は「ブロックチェーンは来歴や転売の記録、証明書などにも利用でき、美術品取引の信頼性向上や購入者の安心感につながる」と指摘している。【柿崎誠】

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