日本が直面する「無理ゲー社会」と政治の機能不全 橘玲さんに聞く
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安倍晋三前政権から菅義偉政権までの9年弱、日本社会は大きく変化した。今、私たちが向き合うべき問題の本質はどこにあるのか。リベラル(自由)であるがゆえに生きづらい、そんな現代社会を攻略不能なゲームになぞらえた著書「無理ゲー社会」(小学館新書)がベストセラーとなっている作家の橘玲さんに聞いた。【聞き手・和田憲二/経済部】
「リベラル化」には影がある
――「無理ゲー社会」の冒頭、低賃金や不安定な雇用、親の介護への不安などから「自殺する権利」の制度化を求める若者たちの切実な声が紹介されています。新自由主義的な安倍・菅政権の下、経済格差が広がったことが関係しているのでしょうか。
◆今の日本の政治という以前に、世界的に社会の分断が進んでいます。「経済格差」や「強欲な資本主義」が元凶とされますが、問題の本質は急速なテクノロジーの進歩を背景とした「リベラル化」「知識社会化」「グローバル化」です。
第二次世界大戦後、人類史的にはありえないほど長い平和と豊かさが実現し、そういう時代しか体験したことのない若者たちが「自分の人生は自分ですべて選択して、自分らしく自由に生きることを目指すべきだ」と考えるようになった。この価値観の大転換は1960年代に米国の西海岸で始まり、「セックス・ドラッグ・ロックンロール」のカウンターカルチャーとして瞬く間に世界中の若者をとりこにしました。
それに対して「このままではとても社会が維持できない」との揺り戻しが保守派から出てきて、レーガン政権が典型ですが、政治や社会の「右旋回」が起きた。
これは「左派が文化戦争に敗北した」と言われましたが、現実はまったく逆で、カウンターカルチャーの申し子であるスティーブ・ジョブズがアップルを作ったように、60年代のヒッピームーブメントはパンデミックのように世界に広がって、人々を支配してきました。「自分らしく生きたい」「自由に生きたい」という価値観は、いまでは保守派を標ぼうする人でも否定することができません。
――人々が「自分らしく自由に生きたい」と願い、互いに多様性を受け入れて尊重すること自体は良い価値観のようにも思えますが。
◆マイノリティーがこれまで認められなかった権利を獲得したように、リベラル化はもちろん素晴らしいことです。ただ、それはコインの裏表の関係で、光が強ければ強いほど影も濃くなる。今までみんな、機会を平等にし、誰もが自分らしく生きられる社会をつくっていけば、いずれユートピアが実現できると思っていた。…
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