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旅行、百貨店、飲食業界に薄日 期待と見通せぬ「全面解除」

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緊急事態宣言の影響で、人出の少ない有馬温泉=神戸市北区で2021年9月9日午後2時41分、望月亮一撮影 拡大
緊急事態宣言の影響で、人出の少ない有馬温泉=神戸市北区で2021年9月9日午後2時41分、望月亮一撮影

 政府が28日、東京、大阪など19都道府県に発令中の緊急事態宣言の解除を決めたことで、人流(人の流れ)抑制の影響で厳しい経営を強いられてきた旅行や小売り、飲食業界にはようやく薄日が差しそうだ。しかし、新型コロナウイルス感染拡大前の人出が戻る保証はなく、今後の回復は予断を許さない。

 旅行業界では、県境をまたぐ移動がしやすくなることを見越し、新たな宿泊プランを打ち出す会社もある。日本旅行は10月から、移動にJRを使うパック商品で、ワクチン接種を2回受けた人にはホテルや旅館で食事や土産物に使える「館内利用券」(1部屋につき3000円分)を贈る。同社は「各地域のホテルや旅館があってこそ旅行会社は成り立つ。過酷なコロナ禍を一緒に乗り越えていきたい」(広報担当者)と話す。

 来店客数が、コロナ前に比べ3~4割減の状況が続く百貨店業界も期待をかける。7月下旬から一部店舗の食品売り場で感染が拡大し、東京都や大阪府が入場者数の半減を求める事態に。一時休業や混雑時の入場制限などを強いられ「極めて厳しい業績動向」(日本百貨店協会の安田洋子専務理事)に直面してきた。

 ある大手百貨店の担当者は、クリスマスやおせち商戦の本格化に向けた時期の宣言解除に「10月1日はタイミングもいい。このまま感染者数の少ない状態が年末年始まで続いて、消費者心理が上向いてほしい」と祈るように話した。

 飲食業界では手放しで喜べないとの声もある。酒類提供の制限緩和は段階的に実施されるためだ。

 白木屋や魚民などの居酒屋チェーンを展開するモンテローザは、ワクチン接種を2回受けた人に生ビールなど「最初の1杯」を1円で出すキャンペーンを6月下旬に始めたが、ここまでは休業や時短営業の影響で客足そのものが鈍かったという。別の居酒屋チェーン幹部も「今年に入ってまともに営業できたのは数えるほど。宣言解除はうれしい」としつつ、「解除後も酒の提供には時間や人数に制限が付く。感染拡大の第6波も心配。我々の『全面解除』は一体いつになるのか」と複雑な心境を明かした。

入場制限を実施して全館営業を再開した阪神百貨店梅田本店=大阪市北区で2021年8月20日午前10時5分、木葉健二撮影 拡大
入場制限を実施して全館営業を再開した阪神百貨店梅田本店=大阪市北区で2021年8月20日午前10時5分、木葉健二撮影

 宣言解除後、期待通りに客足が戻るかどうかも見通せない。ニッセイ基礎研究所が7月、20~74歳の約2500人に実施した調査では、ワクチン接種が進めば外食や旅行などをコロナ前と同様に楽しむようになるか聞いたところ、「そう思う」と「ややそう思う」の回答は合計で約半数。「どちらとも言えない」が約3割で、消費者も自らの行動を決めあぐねているようだ。

 同研究所の久我尚子上席研究員は「消費者心理は新規感染者数の動向次第の面もあるが、もともと外出に積極的な20代や重症化リスクの高さから長く自粛を強いられた高齢層には再開への期待が強い」と分析。感染状況に十分配慮しつつ、需要喚起策「GoToキャンペーン」の活用などを通じて苦境の業種を救済することが重要だと指摘する。

 産業界には、接種証明を活用した酒類提供の制限撤廃を求める声が上がっている。経済の本格回復にはこうした措置が今後いつ、どこまで具体化するかもカギを握りそうだ。【中津川甫、松山文音、和田憲二】

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