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宣言解除後の日常は…期待高まる観光・飲食業界、懸念する医療関係者

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丁寧に人力車を消毒する「時代屋」の車夫=東京都台東区で2021年9月28日午後3時10分、小川昌宏撮影 拡大
丁寧に人力車を消毒する「時代屋」の車夫=東京都台東区で2021年9月28日午後3時10分、小川昌宏撮影

 19都道府県に発令されている新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言が30日の期限で解除されることになった。客足が遠のいていた観光事業者や飲食業者の間では期待が高まる一方、医療関係者らからは人出急増による感染再拡大を懸念する声も上がる。感染を抑えながら、日常を取り戻せるか。正念場の10月が始まる。

売り上げ9割減「耐えながら待っていた」

 「やっと、という一言に尽きる。本当に長い間、耐えながら待っていた」。東京・浅草で人力車のサービスを運営する「時代屋」の代表取締役、藤原英則さん(65)は緊急事態宣言の解除決定を歓迎している。

 今年に入り、東京都内で緊急事態宣言の発令や、まん延防止等重点措置の適用がなかった時期は28日間しかない。県の境をまたぐ移動の自粛が求められる中、浅草を訪れる観光客の数も落ち込んだ。多い時は日に20台以上が稼働していたという人力車も、最近は5台ほどの稼働にとどまり、売り上げは新型コロナの感染拡大前の2019年と比べると9割減の状態が続く。

 乗車時にワクチンの接種証明を提示した利用客に対する割引サービスも始めたが、長引く宣言発令で観光客の足は遠のいたままで、期待通りの売り上げ回復にはつながっていない。それだけに宣言解除は朗報だ。

 懸念もある。昨年は政府の旅行需要喚起策「GoToトラベル」が始まり、客足が戻りつつあったのに、感染再拡大でストップし、後は苦境が続いた。藤原さんは「昨年の二の舞いにならないか心配もある。今まで通り感染対策の徹底を続けたい」と話す。

 緊急事態宣言の発令が4カ月を超えていた沖縄県。夏の観光シーズンに感染が拡大し、7、8月の観光客数はコロナ前の19年の3割弱にとどまった。那覇市の「ホテルパームロイヤルNAHA国際通り」も7~9月の稼働率は20%台後半。高倉直久総支配人は「稼ぎ時に全然稼げず、宣言があと1カ月延びるとかなり苦しかった」と打ち明け、「観光も少しずつ持ち直していくのかなと希望を持っている」と期待する。

 飲食業界も厳しい経営環境が続いた。東京・新橋の居酒屋「根室食堂」の平山徳治店長(49)も宣言解除後の客足に期待している。東京都は、感染防止対策を徹底していると都が認証した飲食店に限って酒類提供を容認する方針で、平山さんは「ささやかながら未来が見えた」。一方で「宣言解除でお客さんが戻ってきたとして、それが続くかどうか気がかりだ」と語る。

 大阪市北区の洋食店「フィレール」は9月上旬、感染防止策を徹底している飲食店と認められ、大阪府の第三者認証「ゴールドステッカー」を取得した。同府も宣言解除に伴って認証店での酒の提供を容認する方針だが、店を経営する出口彰さん(33)の心境は複雑だ。「解除で再び感染者が増加し、繁忙期の冬に影響が出てしまうのではないかという不安もある。政府には外食は『悪』というイメージを払拭(ふっしょく)できるようなPRを」と注文している。【木下翔太郎、竹内望、古川幸奈】

重症者依然減らず「マスクなし許さないで」

 第5波でコロナ患者の対応に奔走した医療者や保健所の職員からは、緊急事態宣言の解除後の感染再拡大を懸念する声が上がった。

 重症者と中等症のコロナ患者を受け入れる昭和大病院(東京都品川区)。相良博典院長によると、同院の入院患者数はピーク時から半減したものの、重症者を減らすにはまだ時間がかかるという。

 相良院長は「感染者は確かに減っているものの、収束しているわけではない。解除後は移動する人が増えるだろうが、危機意識の薄れにつながらないか心配。今後も感染が再拡大する可能性はあり、注意しなければいけない」と述べ、宣言解除がもたらす影響について懸念する。その上で「感染が減ったのは、人々が厳しい危機意識を持ちながら感染対策をしていたからだろう。宣言解除後も、密を避けたり、マスクを着用したりすることは続けていくことが重要だ」と話す。

 第5波では感染者の急増で保健所の業務も逼迫(ひっぱく)した。東京都などでは膨れ上がった自宅療養者への対応に遅れが生じたほか、濃厚接触者や感染経路を詳しく調べる「積極的疫学調査」の縮小も余儀なくされた。都内の保健所の職員は「陽性者の発生届が増えたことで全ての業務が圧迫された。特に自宅療養中に症状が悪化した方への救急対応は連日夜中に発生し、体力的に限界に近かった」と振り返る。

 宣言解除後に一気に人の流れが増え、業務が再び逼迫するのではないか――。そんな不安もよぎる。政府が目指す秋以降の行動制限緩和の方針については「ワクチン接種を終えても発症することがある。海外のようにワクチン接種証明があってもマスクなしの行動、宴会を許してはいけない」と語る。【林奈緒美】

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