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今月15日、私は大学の学位記授与式に参列した。9月期は少数で留学生が多い。一般の卒業式のように華やかな着物姿の人もなく、みな黒のスーツ姿である。静寂の中、粛々と式は執り行われた。
大学院への入学を許してくれた夫が2年前、病に倒れた。介護と会社の引き継ぎをしながら論文を書くのは限界に近かった。ときには投げ出したくなり、夫につらく当たることもあった。そんなときは、なんとも言えないみじめな気持ちに陥り、夫の好物を作って食べさせた。
夫は1年前、この世を去った。亡くなった後、いろいろな手続きに忙殺された。論文がなかなかはかどらない。期限は迫ってくる。自暴自棄になる一歩手前のとき、励ましてくれたのが教授であり学友たちであった。ラインや電話で、また直接会って励ましてくれた。その間の日曜日は、食事を取ったか取らないかわからないほど論文に没頭した。なんとか提出日に間に合ったときは、気が抜けた。
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