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常夏通信

その113 戦没者遺骨の戦後史(59) 「遺品縛り」解除後の課題とは

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厚生労働省が入る合同庁舎=東京都千代田区で2021年9月17日、袴田貴行撮影
厚生労働省が入る合同庁舎=東京都千代田区で2021年9月17日、袴田貴行撮影

 戦没者遺骨のDNA鑑定について、10月1日、大きな動きがある。厚生労働省は、収容の対象となっている一部地域で行っていた「遺品がない遺骨の鑑定」の範囲を拡大して全面的に実施するのだ。当初は印鑑や記名のある万年筆などで、身元がある程度推定できる遺骨だけを対象としていたが、遺品なしで判定する地域を徐々に拡大してきた。私(栗原)は遺品の有無にかかわりなく、すべてを精査して身元が特定されるべきだと主張してきたので、今回の決定は大きな画期と一定の評価ができる。だが、重大な懸念を感じさせる事態も生じている。【栗原俊雄/学芸部】

「遺品縛りを解くべきだ」と繰り返し報道

 政府は独立を回復した1952年以来、中断はあったが国内外での戦没者遺骨の収容を進めてきており、DNA鑑定は2003年に始まった。しかし、見つかった遺骨すべてを鑑定するわけではなかった。技術的にDNAを抽出することができ、かつ遺骨の身元特定につながる遺品や埋葬記録などの資料がある場合に限って鑑定をしていた。

 激戦地での遺骨収容や調査を経験すれば分かる通り、そうした遺品や資料がみつかるケースは極めてまれだ。だから「遺品縛り」をしている限り、遺族らが苦労して収容した遺骨が鑑定されないまま「無縁仏」になってしまう。「鑑定の条件が厳しすぎる」という批判が、遺族らから上がっていた。

 戦争報道=「8月ジャーナリズム」を一年中やっている常夏記者こと私は、06年から戦没者遺骨の問題を取材している。その経験から、「そもそもDNAをマッチングする遺族が高齢化しているため、悠長に構えている時間はない。現在の技術では焼かれた骨からは抽出できないのでこれは致し方ないとしても、資料がなければ鑑定しない、というのはおかしい」と思っていた。…

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