ヨウ素剤配布は5キロ?30キロ? 小泉氏の「お墨付き」に困惑

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小泉進次郎・原子力防災担当相=首相官邸で2021年9月7日午前10時40分、竹内幹撮影
小泉進次郎・原子力防災担当相=首相官邸で2021年9月7日午前10時40分、竹内幹撮影

 原発事故時に甲状腺被ばくを防ぐ医薬品「安定ヨウ素剤」を、事前の備えとしてどのエリアの住民に配るのかが定まっていない。国の指針は原則5キロ圏に限っているが、4日の新内閣発足で退任が見込まれる小泉進次郎・原子力防災担当相が2020年2月、5~30キロ圏にも配る方針を打ち出した。しかしその後、5~30キロ圏の配布に手を挙げたのは新潟県だけ。多くの自治体は及び腰で、困惑は広がるばかりだ。背景に何があるのか。【日野行介/デジタル報道センター】

指針「5~30キロ圏は事故後に配布」

 まずはヨウ素剤についておさらいしたい。

 原発事故で放出される放射性ヨウ素を吸い込むと、首の下にある甲状腺にたまり、内部被ばくでがんを引き起こす恐れがある。ヨウ素剤を直前に服用するとがんを防ぐ効果があるとされる。だが東京電力福島第1原発事故では、国と福島県が適切なタイミングで服用を指示しなかったうえ、情報も混乱。住民への配布・服用に至った自治体は一部にとどまった。

 福島事故後に発足した原子力規制委員会は「原子力災害対策指針」に基づき、ヨウ素剤配布・服用のガイドライン(https://www.nsr.go.jp/data/000024657.pdf)を定めた。それによると、配布の対象はヨウ素剤の効果があるとされる原則40歳未満の住民だ。5キロ圏では、事故の備えとしてあらかじめ配っておく(事前配布)。一方で5~30キロ圏ではヨウ素剤は備蓄しておき、実際に事故が起きて放射線量が上がり避難が必要と判断された場合に、避難の途中で配る(緊急時配布)とした。

 なぜ5キロ圏と5~30キロ圏で対応が異なるのか。指針では、5キロ圏の住民は事故の兆候があった時点で即時避難させるのに対し、5~30キロ圏の住民は「屋内退避」で被ばくを防ぐのが原則だからだ。

 福島事故では原発から逃げる住民らで渋滞が発生。病院や介護施設では避難が原因で死亡するケースも相次ぎ、規制委は「5~30キロ圏の住民を一斉に避難させるのはかえってリスクが高まる」と判断した。ガイドラインによると「ヨウ素剤には確率が極めて低いものの副作用のリスクがあり、適切なタイミングで服用しないとかえって有害性が高まる恐れもある」とされる。規制委はこうした事情から、避難とヨウ素剤の配布・服用を「セット」にしたのだ。

 ただ、指針には5~30キロ圏での事前配布を認める例外規定がある。「5キロ圏と同様に即時避難する可能性のある地域」や「避難の際に受け取るのが困難とされる地域等」などだ。例えば、離島の住民や、原発のある半島の先端に住んでおり5キロ圏を通らないと逃げられない住民などが、この対象になる。

 ところが島根県は16年度から、妊婦や障害者、その家族などの希望者を対象に、5~30キロ圏での事前配布を始めた。例外規定にある「地域等」の「等」は、そのまま読めば「地域」のことだが、これを「人」に…

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