今週の本棚
中村桂子・評 『グッド・アンセスター』=ローマン・クルツナリック著、松本紹圭・訳/『土になる』=坂口恭平・著
- ツイート
- みんなのツイートを見る
- シェア
- ブックマーク
- 保存
- メール
- リンク
- 印刷

◆『グッド・アンセスター』=ローマン・クルツナリック著、松本紹圭・訳(あすなろ書房・1980円))
◆『土になる』=坂口恭平・著(文藝春秋・1870円)
未来世代の「よき祖先」になる決心
新型コロナウイルス・パンデミックと地球温暖化による異常気象を危機と捉え、一刻も早く抜け出さなければならないとは誰もが考えていることだ。ところがここには「今すぐ行動が要求される最も緊急性の高い課題として、長期思考を求めねばならない」というパラドックスがある。しかも、現代社会は「長期思考という概念の危機」にあると『グッド・アンセスター』の著者は言う。
人類は、200万年ほど前に脳の大型化の過程で四つの長期思考を身につけた。(1)狩猟採集の旅のための認知地図作成 (2)おばあちゃんが子どもをケアする世代間の時間 (3)信頼、互恵、共感にもとづく協力関係 (4)道具の開発。このような長期脳を著者は「どんぐり脳」と呼ぶ。子どもにマシュマロを15分食べずに我慢したらもう一つあげると言っても3分の2はすぐ食べてしまうという実験例から、短期脳は「マシュマ…
この記事は有料記事です。
残り1614文字(全文2082文字)