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岸田新内閣が発足 政策を転換できる布陣か

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 安倍晋三、菅義偉両政権の9年間のひずみを修正し、国民の望む方向に政策を転換できるのか。疑問が残る布陣である。

 自民党の岸田文雄総裁が第100代首相に就任し、新内閣を発足させた。

 閣僚20人のうち、13人が初入閣だ。若手登用をアピールするため、当選回数の少ない衆院3期から3人を抜てきした。

 先端技術の流出防止などの強化に向けて新設した経済安全保障担当相に小林鷹之氏を充てた。そのほか注目されるワクチンやデジタルの担当相にも若手を起用した。

 独自色を出そうと腐心した跡はうかがえる。だがそれ以上に、党の「実力者」への配慮が際立つ人事だった。

 内閣の要である官房長官には松野博一氏を起用した。安倍氏が強い影響力を持つ最大派閥・細田派の事務総長である。同じ派閥で安倍氏に近い萩生田光一経済産業相、岸信夫防衛相が閣内に残った。

拭えぬ「安倍・麻生」色

 これに先立つ党役員人事でも、安倍氏と麻生太郎副総裁に近い人物が重用された。第2派閥である麻生派重鎮の甘利明氏が党中枢の幹事長を担い、総裁選で安倍氏が支援した高市早苗氏が政策責任者の政調会長に就いた。

 岸田色が出たのは、党改革を提言した若手・中堅有志から福田達夫氏を総務会長に抜てきした程度だった。

 重要ポストを最大派閥と第2派閥に譲り渡した結果、党の力が強まる形となった。安倍、麻生両氏を軸にした従来の権力構造は維持された。

 岸田氏は「聞く力」を強調するが、安倍氏らの声を聞くばかりでは方向転換は望めない。

 注目されるのは、掲げた政策をこの体制で実現できるかだ。

 岸田氏は新自由主義的政策を転換し、「新しい日本型資本主義」を実現すると訴えてきた。

 経済成長と効率を優先するアベノミクスは、大企業や富裕層を潤した。一方、非正規の労働者は新型コロナウイルス禍で苦しい生活を強いられ、格差が拡大した。

 富の再分配に力を入れ、国民全体の所得を引き上げる「令和版所得倍増」を目指すという。宏池会(現岸田派)の創始者である池田勇人元首相の「所得倍増」に倣ったものだ。

 キャッチフレーズで終わらせないためには、アベノミクスの見直しが避けられない。

 ただし、党の要職に就いた甘利、高市両氏は安倍政権時代にアベノミクスを推進した立役者だ。政務担当の首相秘書官には、安倍政権で経産事務次官を務めた嶋田隆氏が就いた。アベノミクスの政策立案を支えたのが経産省と、同省出身の「官邸官僚」だった。

 党も官邸も安倍色の強い人物が重用され、党内から「安倍政権の再来だ」との声が聞かれる。

分配重視の理念実行を

 喫緊の課題であるコロナ対策は、経済活動の再開を進めながら感染再拡大を防ぐという難しい局面にある。

 ところが、厚生労働相やワクチン担当などコロナ対策を担った閣僚を軒並み交代させた。これで危機管理に万全を期したと言えるのだろうか。

 1年半に及んだコロナ禍の経験と教訓を生かす取り組みが求められる。

 脱炭素社会に向けた道筋づくりも大きな課題だ。2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする目標に向けて前進することが、新首相の責任だ。

 岸田氏は原発を「クリーンエネルギーの選択肢」の一つと位置づける。だが、国民の不信は根強く、安全対策費の膨張で発電コストも上昇している。

 どのような国を目指し、課題を解決していくのか。8日の所信表明演説で、自らの言葉で具体的に語らなければならない。

 岸田氏は14日に衆院を解散し、総選挙を19日公示、31日投票の日程で行う意向だ。

 本来なら解散前に与野党の争点を明確にするため予算委員会を開き、一問一答で議論を戦わせるべきだ。野党は論戦封じだと批判している。

 失点がないうちに早く選挙をした方が得策だと新政権が考えているとすれば、党利党略と言うほかない。

 具体的な政策は全て衆院選後に回そうという姿勢では、国民の信頼は得られまい。

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