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大学スポーツ365日

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初代は本格派チョコの仕掛け人 帝京大ラグビー部学生コーチの系譜

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コロンビアでカカオを手に取る石原紳伍さん=メゾンカカオ提供
コロンビアでカカオを手に取る石原紳伍さん=メゾンカカオ提供

 その香り高きチョコレートは、天皇陛下の即位の礼(2019年)で列席者への機内手土産とされるほど高い評価を受けている。国内7店舗を展開するチョコレートブランド「MAISON CACAO(メゾンカカオ)」(神奈川県鎌倉市)の創業者、石原紳伍さん(37)は帝京大ラグビー部の初代学生コーチだった。チームの黒衣役に徹した経験が、今も生きる。その系譜は脈々と受け継がれている。

黄金期築く学生コーチ

 1996年に岩出雅之監督(63)が就任後、地力を付けた帝京大は石原さんの学生時代、悲願の全国大学選手権制覇へと少しずつ近づいていた。学年の垣根を越えて結束をより固めるために岩出監督が06年に導入したのが、学生でありながら指導者を務める学生コーチだった。

 フルタイムで指導できるコーチが不足していた背景もあるが、熱意ある選手が選手としての道を諦め、チームのために退路を断って懸命に学生コーチに取り組む姿は、同級生のみならず下級生の意欲や士気を高め、チーム力が底上げされる。岩出監督はそう考えた。選手を目指してきた学生の人生を変える重みを感じながらも、多くの部員を抱えるチームで主将や監督の「目」を補い、チームのまとめ役になることができれば、本人にも周囲にもプラスになると判断した。

 大阪市出身の石原さんは、全国高校ラグビー大会(花園)で優勝5回を誇る大阪工大高(現常翔学園高)出身で、帝京大ではフォワード(FW)としてプレーしていた。学生コーチとなるよう打診されたのは、大学4年生の新チーム発足前。選手への未練はあったが引き受け、これまで競い合ってきた仲間に対し、コーチとして技術指導をするだけでなく、年齢の離れた監督と選手の間を取り持つパイプ役となり、主将らのサポートもした。今でこそ学生コーチは他の大学も含めて定着してきたが、当時は参考になる例も存在しなかった。選手の意見をとりまとめて監督に練習方針の変更を提案したり、監督が練習中に発した言葉の真意を選手に説いたりと、試行錯誤しながら、これまでなかった役割について、立ち居振る舞いを模索した。

 「選手と監督の間を埋めて、良い方向にチームを誘導していく。どうしたら選手でなくとも『大学日本一』に貢献できるのか。それを考えた一年だった」と石原さん。06年度の第43回全国大学選手権は1回戦で敗退したが、この時の1年生が4年生となった09年度、第46回全国大学選手権で帝京大は初優勝を遂げる。学生の自主性と規律を重んじ、結束を大切にするチーム作りを掲げ、その中核を学生コーチが担うことで、以来17年度まで史上初の9連覇という黄金期を築いた。

 石原さんは卒…

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