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毎日新聞朝刊1面の看板コラム「余録」。▲で段落を区切り、日々の出来事・ニュースを多彩に切り取ります。

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 「学問をして金をとる工夫を考えるのは北極へ行って虎狩をするようなものである」。これは夏目漱石(なつめそうせき)が小説「野分(のわき)」の主人公に語らせた言葉だ。「学問は金に遠ざかる器械である」という考えの文学者である▲この男、行く先々で地元有力者の金権体質と衝突して学校をクビになったから、明治でも学問=清貧とはいかなかったようだ。ただ「学問をするものの理想は何であろうとも――金でない事だけはたしかである」は今でも通用しよう▲巨額の資金が動く今日の「学問の府」である。だがそれが真理と無縁の錬金術の場となっていたとしたら、昔であれ今であれ許せるものではない。日本大学の理事ら2人が2億2000万円を外部に流出させた背任容疑で逮捕された▲付属病院の建て替えをめぐり設計業者に支払った費用の一部をペーパーカンパニーに送金させていた容疑である。逮捕された理事は理事長の側近で、3年前のアメフト部の悪質タックル問題では選手に口止めをしたという人物である▲流出金のうち2500万円は複数の会社を経て理事の手元に渡ったとみられている。それでは残りはどうなったのだろう。捜査にあたる東京地検特捜部はこれまでに日大本部や関連する企業のほか、理事長宅なども家宅捜索している▲国内最大規模の総合大学に巣くう闇から流れ出た巨額資金である。その責任者である理事長ならば、起きた事柄の詳細を世に説明する責任があるはずだ。言葉なき「学問の府」の闇の深さがおぞましい。

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