はやぶさ2が持ち帰った石とは/下 「昔話が楽しみ」研究者の思い
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探査機「はやぶさ2」が小惑星リュウグウで採取した、約5・4グラムの真っ黒い石や砂。来年6月までの初期分析に当たる6チームのリーダーが、この貴重な試料に対して抱く思いはさまざまだ。「小惑星の物質って、自分にとってどんな存在ですか?」。問いに対する答えからは、それぞれが研究にかける情熱が伝わってくる。【池田知広、永山悦子】
“遺言”残して死んでいく「師匠」
「気の毒な存在だなって思うんです。申し訳ない」
揮発性物質(ガス)を分析する岡崎隆司・九州大准教授の感覚は独特だ。
小惑星は「太陽系の化石」と呼ばれる。ドロドロに溶けて高温になった過去がある地球などの惑星と違い、太陽系が誕生した約46億年前の物質を比較的よくとどめているからだ。
岡崎さんは「ガスを抽出するために(小惑星からやって来た)隕石=いんせき=を破壊することが多いのですが、46億年も無事に『生きてきた』のに、僕が蒸発させていることになる。でも科学的に貴重な、太陽系の成り立ちを教えてくれる。死に際に大切な情報を残して死んでいく師匠のようです」と語る。
こうした感覚をもとに、岡崎さんはリュウグウの試料を破壊してしまう前に、さまざまな非破壊の分析を組み込んだ。まず表面を赤外線や電子顕微鏡で観察。ガスに関連する窒素などの軽い元素を分析し、さらに中性子を照射してイリジウムなど微量元素も分析する。「大事な試料なので、さまざまな情報を同時に取得する計画なんです」と岡崎さんは説明する。
小惑星の試料を「実験室と宇宙をつなぐ『扉』」と表現するのは、リュウグウ試料の化学組成を明らかにする予定の北海道大・圦本(ゆりもと)尚義教授だ。
これまで圦本さんは多数の隕石を分析し、太陽系の起源と進化に迫ってきた。「僕にとっては小惑星は天文学で、隕石は化学。小惑星の物質はその過渡的な段階にあるものです。その扉を開けると、彗星=すいせい=や太陽系外惑星など、もっと遠くの宇宙につながっていく。だから隕石がどこから来たものかは、すごく興味があるんで…
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