「公認されない死」流産・死産 当事者の住職夫婦がグリーフケア

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慈照寺住職の秋山和信さん(左)と妻美智子さん=高松市由良町で2021年8月25日午後6時2分、西本紗保美撮影
慈照寺住職の秋山和信さん(左)と妻美智子さん=高松市由良町で2021年8月25日午後6時2分、西本紗保美撮影

 流産や死産は「公認されない死」と呼ばれる。自治体は実態を十分に把握しておらず、赤ちゃんとの死別による深い喪失感への社会の理解もまだ進んでいないためだ。死産を経験し、当事者らへの情報発信、グリーフ(悲嘆)ケアに取り組むある住職夫婦の思いを取材した。【西本紗保美】

 「安定期を迎えていたのにどうして――」。2020年10月、高松市由良町にある浄土真宗慈照寺の住職、秋山和信さん(47)と美智子さん(44)夫婦は、香川県内の病院で検査した際、胎児に異常があると告げられた。妊娠20週を超えており、人工的に陣痛を起こして分娩(ぶんべん)した。男の子で体重は500グラム未満。死産だった。体を抱くと目、鼻、口がはっきりと見えた。「この世にいなかったことにしたくない」。夫婦は赤ちゃんを「智信(ちしん)」と名付け、寺で葬儀も営んだ。

 20年暮れ、悲しみに追い打ちをかける出来事があった。新型コロナウイルス禍で政府が妊婦を対象に各自治体を通して配布したマスクが自宅に届いた。「言葉が出なかった」と和信さんは振り返る。高松市には既に死産届を提出していた。ただ、当事者から保健師などへ相談がない限り、母子保健の担当者がそれを知る仕組みになっていなかった。市の担当者は「コロナ禍での突発的な事業で対応が至らなかった」と説明する。病院でひつぎ…

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