3歳熱湯虐待死「耳にあざ」情報 大阪・摂津市と児相で共有されず

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亡くなった新村桜利斗ちゃんに関する虐待関連情報を放置していたことが発覚した摂津市役所=大阪府摂津市三島1で2020年6月、遠藤浩二撮影 拡大
亡くなった新村桜利斗ちゃんに関する虐待関連情報を放置していたことが発覚した摂津市役所=大阪府摂津市三島1で2020年6月、遠藤浩二撮影

 大阪府摂津市のマンションで8月、新村桜利斗(にいむら・おりと)ちゃん(3)が熱湯をかけられて死亡し、母親の交際相手が逮捕された事件で、摂津市は6月中旬、桜利斗ちゃんへの虐待を疑わせる新たな情報を保育園から得ていたのに、児童相談所と共有していなかったことが児相への取材で判明した。「左耳あたりにあざがある」との内容だったが、市は母子との面会など詳細な調査をしておらず、情報は放置されていた。

 頭部付近の傷は虐待のリスクを高める情報とされ、市幹部は「早急に対応していればリスク判断が上がる可能性があった」と説明。緊急性は低いとしていた市の判断が誤っていた可能性を示唆しており、大阪府が設置した有識者の検証部会でも焦点になりそうだ。

事件の経緯と摂津市の対応 拡大
事件の経緯と摂津市の対応

 市によると、桜利斗ちゃんが通う保育園は事件2カ月半前の6月15日、「5月中旬に桜利斗ちゃんの左耳あたりにあざがあった。母親は『いつあざができたか分からない』と言っている」と市に連絡した。

 厚生労働省の「子ども虐待対応の手引き」は行政側に対し、受傷の経緯が分からないけがは虐待のリスクが高く、早期に情報収集を実施する必要があると規定。特に乳幼児の頭部や顔面のけがは「危険性が高い」とし、「虐待の事実を明白に否定する情報がない限り、原則として保護をする必要がある」と呼び掛けている。

 しかし、市は桜利斗ちゃんの母親に聞き取り調査をせず、桜利斗ちゃんの傷の状況や様子を直接確認することもしていなかった。7月中旬には、一時保護の権限を持つ児相の「大阪府吹田子ども家庭センター」と会議を開いたが、児相の担当者は「会議で記録として共有されていない。左耳のあざ情報は今回初めて知った」と語った。

 ただ、市側は「情報は児相に報告した」と主張。調査しなかった理由については「記録がないので分からない」と説明している。

 桜利斗ちゃんを巡っては、母親が5月に「交際相手がほおをたたいた」と相談。市は交際相手との面会で注意していたほか、左耳のあざ情報が寄せられた直前の6月2日には、母親の知人らが市の家庭児童相談課に「このままでは桜利斗が殺されてしまう。保護してほしい」と訴えていた。桜利斗ちゃんは8月31日に殺害された。

 市は短期間で複数の「危険シグナル」を得ていたにもかかわらず、「緊急性は低い」との判断を変えていなかった。児相と連携して緊急性の評価を見直せば、桜利斗ちゃんを一時保護できた可能性もあり、市の危機感の欠如が改めて浮き彫りになった。

 児相での勤務経験がある「子どもの虹情報研修センター」(横浜市)の川崎二三彦センター長は、市の対応について「頭部外傷の情報が連続しており、一連の情報を入念に点検すれば、緊急度の判断も実態に合うよう修正できたのではないか」と指摘。「虐待問題で得られる情報はあいまいだったり、うそが混じったりすることも多い。異なる視点を持つ関係機関の職員が連携し、不自然な情報や違和感を見過ごさないことで課題や問題点は把握できる」と訴えた。

 一方、大阪地検は13日、桜利斗ちゃんの母親と交際していた無職の松原拓海(たくみ)容疑者(24)を殺人罪で起訴した。捜査関係者によると、松原被告は当初、「故意に熱湯を浴びせていない」と容疑を否認していたが、その後黙秘に転じたという。【安元久美子、郡悠介】

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