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最前線の記者がそれぞれの取材テーマを論じます。1976年にスタートした毎日新聞を代表するコーナー。

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連載「ぶらっとヒマラヤ」を終えて 登山の「中毒性」に向き合う=藤原章生(夕刊報道グループ)

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「ぶらっとヒマラヤ」の一場面。ダウラギリⅠ峰北東稜(りょう)、最終キャンプ手前の登り。高所では空が群青色に見える=2019年10月10日午後1時44分、藤原章生撮影
「ぶらっとヒマラヤ」の一場面。ダウラギリⅠ峰北東稜(りょう)、最終キャンプ手前の登り。高所では空が群青色に見える=2019年10月10日午後1時44分、藤原章生撮影

 毎日新聞で36回にわたり連載したエッセー「ぶらっとヒマラヤ」が9月末、終わった。元はニュースサイトで昨年の2~7月に載ったもので、新聞連載中に本として刊行される異例の経過をたどった。

 この連載は2019年秋、当時58歳の私が何を勘違いしたのか、ヒマラヤのダウラギリⅠ峰(8167メートル)に挑み、強風のため頂上直下で断念した話だ。登山記に必須の風土や紀行などの話は一切なく、題材は筆者の脳と体だけである。出発前、呼吸を高めるため鼻を手術したり、富士山に登ったりとジタバタする姿や、7日に1度は起きる雪崩の恐怖と滑落の怖さの違い、高所での自己嫌悪や多幸感まで、幼いころの記憶、人々の言葉を頼りに答えを求めていく。生きる意味を問う物語だ。

 連載に登場した登山家には後日談がある。50代から8000メートル峰14座のうち12座を登り、残るダウラギリに10回も挑戦していたカルロス・ソリアさん(82)はこの秋再び挑んだが、体調を理由に断念した。そのソリアさんから「あんなのは登山ではない」と無謀な頂上アタックを非難されたチリ人のフアン・パブロ・モールさんは今年2月、K2で遭難死した。33歳だった。

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