古刹の境内にキャンプ場 「観光×防災」和歌山の若手住職が挑む

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和歌山県那智勝浦町にある大泰寺の境内に開設されたキャンプ場=大泰寺提供
和歌山県那智勝浦町にある大泰寺の境内に開設されたキャンプ場=大泰寺提供

 和歌山県那智勝浦町の古刹(こさつ)、大泰寺(だいたいじ)には、境内にキャンプ場がある。キャンピングカーで泊まれる「RVパーク」も併設した本格的な施設だ。「いざという時に力を発揮できるように」。若い住職が掲げたコンセプトは「観光×防災」。

 開創1200年の大泰寺は世界遺産・熊野古道の一つ、大辺路(おおへち)沿いにある。境内の薬師堂を過ぎ、竹林の間を進むとテントとたき火の明かりが見えてきた。キャンプ場は広さ約1000平方メートル。キャンピングカー5台分の電源を備え、宿坊を営む寺の入浴施設も利用できる。2年前にキャンプ場がオープンしてすぐに新型コロナウイルス禍に見舞われた。それでも住職の西山十海(とうみ)さん(40)は「少しずつ予約は増えてきている」と言う。

 西山さんは町内にある別の寺の息子として生まれ育った。東京で英語教員を務めるなどした後、寺の後継者不足から帰郷。2016年から大泰寺など四つの寺の住職を兼ねている。

 11年3月11日。西山さんは当時勤務していた東京都内の中学校体育館で、卒業を祝う「3年生を送る会」に参加していた。突然の大きな揺れ。東日本大震災の発生だった。「全校生徒が体育館にいる状態での避難は想定外。ひびの入った校舎に生徒を戻してよいのか、帰宅させて安全なのか。災害は予期せぬところで起きると身をもって感じた」と振り返る。

 半年後、古里も災害に襲われる。同年9月初旬、台風12号による紀伊半島豪雨が起きた。和歌山、奈良、三重3県の死者・行方不明者は88人に上り、那智勝浦町では土石流などで29人が犠牲になった。翌月に東京から駆けつけた。実家の寺は無事だったが、町の惨状を目の当たりにした。災害を意識した取り組みの原点になった。

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