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毎日新聞朝刊1面の看板コラム「余録」。▲で段落を区切り、日々の出来事・ニュースを多彩に切り取ります。

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9世紀前半、最後の遣唐使として海を渡った天台宗の高僧…

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 9世紀前半、最後の遣唐使として海を渡った天台宗の高僧、円仁(えんにん)は詳細な旅行記を残した。唐の都・長安に向かう途中、今の山西(さんせい)省太原(たいげん)市付近で初めて見た物に驚いている。石炭だ。煮炊きに使うために人々が取りに集まってくると記した▲同省には中国最大の炭田がある。当時から産出の中心だったのだろう。そこを今月、歴史的な豪雨が襲い、多くの炭鉱が操業停止を迫られた。石炭火力発電の供給制限で深刻化する電力不足に拍車をかけかねない▲エネルギー不足は世界的な傾向である。新型コロナウイルスのワクチン接種が進み、米中に続き欧州でも製造業の生産が回復し始めた。温暖化防止のために石炭から石油や液化天然ガス(LNG)、再生可能エネルギーへのシフトが進むことも関係している▲中国は二酸化炭素(CO2)排出量の多い石炭火力への制限を強め、LNGの輸入を増やした。輸入世界一の日本を抜く勢いだ。欧州では風の弱い日が多く、風力発電量が落ち込んだ。LNGの争奪戦も起きているそうだ▲原油、LNGの国際価格が急騰し、国内のガソリン価格も値上がりするなど庶民の生活に影響が出始めた。石油輸出国機構(OPEC)は増産に慎重で当面、収まる気配はない。電気・ガスなど公共料金への影響も心配される▲これからは暖房消費も増える。灯油価格が値上げされれば北国の生活を直撃するだろう。世界的なインフレを警戒する声も強まる。衆院解散後も政治空白を生じさせないように願いたい。

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