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第49回衆院選

岸田文雄首相が衆院選を10月19日公示、31日投開票で実施すると表明。短期決戦の選挙戦となります。

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日本の選択 新型コロナ対策 危機に強い社会へ論戦を

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 衆院が解散され、事実上の選挙戦が始まった。政府の新型コロナウイルス感染症対策への初の審判となる。

 流行の収束は見通せておらず、感染症に強い社会の構築へ向け、論ずべき課題は多い。

 昨年1月以来、国内の感染者数は170万人、死亡者数は1万8000人を超える。医療体制が逼迫(ひっぱく)し、自宅療養中に亡くなる人が相次いだ。

 安倍晋三政権と、後を継いだ菅義偉政権に共通したのは、根拠なき楽観姿勢と、科学的知見の軽視である。

 特に感染の「第5波」では、専門家の警告に十分に耳を傾けず対策が遅れた。高齢者へのワクチン接種が進みさえすれば重症者数は抑えられると過信した。現実には、未接種の40~50代を中心に重症者数が急増した。

「失政」の教訓を明確に

 岸田文雄首相は「危機対応の要諦は、常に『最悪の事態』を想定することだ」と繰り返している。かけ声倒れになってはならない。どのような「最悪」を想定し、どう備えるのか明らかにすべきだ。

 今後の焦点は、感染を抑えながら社会・経済活動の正常化を図る「ウィズコロナ戦略」である。来月には希望する人にワクチンが行き渡り、コロナ対応は新たな局面を迎える。

 自民党は、接種済み証明書や陰性証明書を活用し、旅行や会食などでの行動制限を緩和するという。旅行需要喚起策「GoToトラベル」の早期再開も公約に盛り込まれた。経済優先の前のめりな姿勢がうかがえる。

 立憲民主党は、ワクチンを打てない人への差別が懸念されるとして、証明書の活用には慎重な姿勢だ。公約でも、感染対策の徹底や医療体制の強化を前面に打ち出している。

 一定の感染対策を維持しつつも、経済を徐々に動かしていく必要はある。一方、行動制限を緩和する場合、感染の再拡大に備えて、対策を強化する基準を明確にしておくことが欠かせない。

 危機対応に万全を期すためには、構造的な問題に取り組むことも重要だ。

 新型コロナで露呈したのは、医療体制の脆弱(ぜいじゃく)さだ。感染症の治療に習熟した人材の育成や、重症者に対応できる設備を整えた病床の拡充を急がなければならない。

 公立病院は今回、多くの患者を受け入れ、重要な役割を果たした。コロナ前に策定された統廃合計画は、見直しが必須だ。

 感染経路の調査や入院調整を担う保健所は、感染者の急増に対応しきれず業務がパンクした。各地域で公衆衛生の最前線となる存在であり、体制拡充が求められる。

 国内のワクチン開発体制の確立も不可欠だ。感染症危機に際してなくてはならない戦略的な物資であるため、民間任せではおぼつかない。国が長期的な支援体制を整えることが重要だ。

医療体制の拡充が焦点

 感染対策を進める上で、国民の権利制限がどこまで許容されるのかも論点になる。

 第5波では、全国知事会が、人の流れを徹底的に抑制し、「ロックダウン(都市封鎖)」も可能となる法改正の検討を求めた。

 だが、危機の際は議論が極端な方向に傾きがちだ。これまでのコロナ対策を検証した上で、慎重に議論しなければならない。

 国と知事の役割分担も見直しが求められる。知事が緊急事態宣言の発令を要請しても国が慎重姿勢を示すなど、足並みがそろわないことがしばしばあった。

 コロナ下では危機管理体制の不備も明らかになった。各党は司令塔機能の強化でほぼ一致しているが、具体策が分からない。

 米国や韓国などでは公衆衛生上の危機に対応する常設の組織を運用してきた。日本はどういう組織で、緊急時にどう対応するのか。人材育成も含め、具体的な方策を示してほしい。

 専門家による助言組織の位置付けも再検討が必要だ。政府分科会などのメンバーは、仕事を抱えたまま分析や提言に携わってきた。独立性に配慮したうえで、国が一定期間雇用し、集中的に対策に当たる仕組みを検討すべきだ。

 新型コロナの危機が過ぎても、いずれ新たな病原体によるパンデミック(世界的大流行)が起きる。衆院選の論戦を、感染症対策の長期戦略構築への一歩としなければならない。

【第49回衆院選】

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