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第49回衆院選

岸田文雄首相が衆院選を10月19日公示、31日投開票で実施すると表明。短期決戦の選挙戦となります。

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日本の選択 暮らしと経済政策 分配実現の道筋を明確に

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国会議事堂(手前)と周辺=東京都千代田区で、本社ヘリから佐々木順一撮影 拡大
国会議事堂(手前)と周辺=東京都千代田区で、本社ヘリから佐々木順一撮影

 新型コロナウイルス禍は日本の深刻な経済格差をあらわにした。第2次安倍晋三政権以降、9年近くも続いたアベノミクスのひずみの表れだ。その総括は衆院選の大きなテーマである。

 東京・神田で石黒友子さん(37)が夫と小さなラーメン店を開業したのは2年前だ。こだわりの味が評判を呼び、行列ができる人気店になったが、コロナ禍で客足が遠のいた。店をたたもうかと悩んだほどだ。

 そんな厳しい状況にあっても、地域で無料の弁当などを提供する「子ども食堂」を始めた。自分たちよりもっと苦しい家庭があると思ったからだ。

 以前はシングルマザーだった。賃金の低い非正規の仕事しか見つからなかった。政府は「アベノミクスで雇用が改善した」とアピールしていたが、実感はなかった。

弱い人たちが助け合い

 コロナ禍で職を失った人も、飲食店の非正規従業員として働いてきたシングルマザーなどが多い。苦労は身に染みて知っている。

 そうした家庭の子どもたちの「おいしかった」と喜ぶ声に励まされた。周囲の人々の厚意にも支えられた。出入りの業者は野菜を無料で分けてくれた。

 緊急事態宣言の解除後も、子ども食堂を続けている。立場の弱い人たちの暮らしは簡単には楽にならない。助け合って大変な時期を乗り切りたい、と願っている。

 日本がコロナ禍をしのいできたのは、こうした国民の自発的な努力に負うところが大きい。だが政治がそれに寄りかかってはいけない。衆院選で各党に求められるのは、国民の不安を解消して、暮らしが上向く展望を示すことだ。

 アベノミクスは経済成長と効率を優先する新自由主義的な政策である。「自助」を重視する菅義偉前首相も継承した。

 金融緩和による株高や法人税の減税で、大企業と富裕層はもうけを増やした。だが多くの国民の賃金は伸び悩んだ。雇用が増えても大半は非正規だった。消費は低迷したままで、成長率も低かった。

 コロナ下で格差はさらに広がった。デジタル関連を中心に大企業は潤い、株価は一段と上がった。一方、非正規労働者は解雇が相次ぎ、コロナ前の一昨年より130万人も少なくなった。

 ひずみを生んだ経済構造を抜本的に見直し、格差を是正しなければならない。それには所得の再分配を進めることが欠かせない。分配で中間層が増えれば、消費が活性化し、経済成長にも資する。

 与野党がそろって公約に分配政策を盛り込んだのも、重要な課題と認識しているからだろう。問題はどのように実現するかである。

 岸田文雄首相は数十兆円の経済対策を策定すると表明した。困窮した家庭や事業者への給付が柱という。立憲民主党は30兆円超の補正予算を編成し、所得税や消費税の時限的な減税を行うと唱えた。

 だが規模をいくら大きくしても、一時的な分配で終わってしまえば、格差を招いた構造が温存されかねない。恒久的な財源を確保して分配を続ける必要がある。

格差是正の財源確保を

 これまでのような借金頼みでは、将来世代へのつけ回しを膨らませるだけだ。景気が停滞する中、負担のあり方は慎重に判断しなければならない。

 コロナ下でも利益を増やしている大企業や富裕層に一定の負担を求めるのは妥当だろう。格差是正の観点からも理にかなう。

 だが首相は、意欲を示していた株式売却益への課税強化を封印した。「成長の果実を分配する」とアベノミクス同様の論理を持ち出しているが、説得力は乏しい。

 立憲は法人税などの増税を打ち出してはいる。しかし具体的な規模や時期は明示していない。

 コロナ禍を受けて、経済政策は転換期を迎えている。

 1980年代以降に新自由主義の中心となっていた米国では、格差是正を掲げるバイデン政権が誕生した。これを機に、第二次世界大戦前の大恐慌時に実施されたニューディール政策が脚光を浴びている。

 当時のルーズベルト大統領は公共事業で失業者を救う一時的対応だけでなく、最低賃金や年金など暮らしを長く支える仕組みも整えた。戦後にかけて米国経済が発展する基盤をつくったといわれる。

 日本も経済再生の土台を築く必要がある。分配の実現に向け、各党は明確な道筋を示すべきだ。

【第49回衆院選】

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