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毎日新聞朝刊1面の看板コラム「余録」。▲で段落を区切り、日々の出来事・ニュースを多彩に切り取ります。

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 台湾を南北に貫く中央山脈は3000メートルを超える富士山級の高山が連なり、「護国神山(ごこくしんざん)」と呼ばれる。同じ異名を持つのが半導体の受託生産で世界一の台湾積体電路(せきたいでんろ)製造(TSMC)である。製造技術でも世界をリードし、台湾に欠くことのできない存在になっている▲そのTSMCが熊本県に日本初の工場を建設する。世界的な半導体不足で政府が誘致を進めてきた。今の日本にとっては良いことなのだろうが、一抹の寂しさも感じる。かつて日本が「半導体王国」だった時代が思い浮かぶからだろうか▲TSMCの創業は1987年。当時、日本の半導体のシェアは世界の半分を占めていた。前年には日本の技術力に脅威を感じた米国との間で半導体協定が結ばれた。その後、日本がシェアを落とす中、設計を行わずに受託生産に徹したTSMCは発展を続けた▲日本製鉄が特許侵害でトヨタ自動車と中国鉄鋼大手の宝山(ほうざん)鋼鉄を提訴したことにも似た感慨を抱く。80年代から宝山の高炉建設や技術を支援してきたのが前身の新日鉄だった。技術の不正な移転を容認できないのは当然だが、世界のトヨタが中国製鋼板を採用することに時代の変化を感じる▲TSMCは台湾当局の支援を受け、時代にマッチした経営戦略を取りながら技術格差を縮め、追い抜き、今の座を築いた。日本にも学んだという▲衆院選では先端技術の流出を防ぐ「経済安保」がしきりに語られるが、自らの技術力をいかに復活、発展させるかも大いに議論すべきである。

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