インターネット社会になり、誰もが情報を発信できる時代だ。半面、フェイクニュースが広がり、人々の行動に影響を与える弊害も表面化している。
新聞は社会の公器として、事実を追求し、正確な情報を伝える責務がある。新聞週間にあたり、そのことを改めて確認したい。
トランプ前米大統領のように、自分に有利な状況をつくるため、フェイクニュースを拡散する権力者もいる。憂慮すべき事態だ。
昨年の米大統領選では、「票が不正に操作されている」との根拠のない情報が流布され、連邦議会議事堂の襲撃につながった。
偽情報が広がると、民主社会の基盤が揺らぎかねない。
第二次世界大戦後初めて、ジャーナリストにノーベル平和賞が贈られるのも、そうした危機感が背景にある。
日本でも、ネット交流サービス(SNS)上で新型コロナウイルスを巡るデマが流れている。ワクチンについても、根拠のない情報が飛び交う。
人々の注目を集める事件や事故が起きると、無関係な人が、デマを真に受けた人から中傷される例が後を絶たない。
ジャーナリズムの主要な役割は、権力を監視することだ。ネット時代に、その意義は一層高まっている。
毎日新聞は政治家らの発言やネット上に拡散した情報について、真偽を検証する「ファクトチェック」に取り組んでいる。
安倍晋三、菅義偉両政権は、都合のいい情報を最大限活用する一方、不利になる状況では説明をはぐらかす姿勢が目立った。「政治とカネ」を巡る疑惑の解明にも後ろ向きだった。
森友学園や「桜を見る会」の問題については、粘り強く取材を続け報じていかなければならない。
総務省が今年実施した調査では、最も信頼度の高いメディアは新聞だった。
19日には衆院選が公示される。幅広い議論に資するよう、冷静な視点から有権者に判断材料を提供するのが新聞の使命だ。
丹念に取材し、情報をふるいにかけ、事実を明らかにする。人々の信頼に応えるための努力を今後も続けていきたい。