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あまり知られていない観光スポットや地元で人気の食べ物を、現地で勤務する支局長が紹介。47都道府県を巡ります。

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わたしの穴場 奈良県 宇陀市「龍王ケ渕」 水鏡抱く神秘の森 大和郡山市出身・声楽家 荒井敦子さん

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水面が鏡のように美しい「龍王ケ渕」=奈良県宇陀市室生向渕で2021年9月5日、堀川剛護撮影
水面が鏡のように美しい「龍王ケ渕」=奈良県宇陀市室生向渕で2021年9月5日、堀川剛護撮影

 風がやむと、眼前に広がる森と雲が水面に映し出される。「鏡の世界にいるみたいで神秘的でしょ? 静かな水面と木々に囲まれた、この空気感が大好きなんです」。昨年5月、この地で歌や演奏を「奉納」した声楽家の荒井敦子さん(67)=奈良市=は優しく語る。

 奈良県北東部の宇陀市室生(むろう)向渕(むこうぢ)地区。国道165号を北に折れ、山中を車で20分走ると、開けた空間が目に飛び込む。ひっそりと水をたたえる「龍王ケ渕(りゅうおうがぶち)」。東西約150メートル、南北約100メートルの楕円(だえん)形の池で、北西南の三方を山で囲まれている。

 「かつて、ここに龍神がすみ、天女が舞い降りたと言われてるんです」と荒井さん。ほとりの堀越神社には、水の神とされる豊玉姫命(とよたまひめのみこと)がまつられる。干ばつの時、住民らが雨乞いの祈りをささげたという。

森の中で、龍王ケ渕(写真右側)に向かって鎮座する堀越神社の小さな社=奈良県宇陀市室生向渕で2021年9月10日、堀川剛護撮影 拡大
森の中で、龍王ケ渕(写真右側)に向かって鎮座する堀越神社の小さな社=奈良県宇陀市室生向渕で2021年9月10日、堀川剛護撮影

 音楽による地域作りに取り組むNPO法人「音楽の森」理事長を務める。県内各地で演奏活動をする中、室生地区にもよく訪れている。「ここには地元の方々が守り続ける『自然』という宝物が残されているんです」と話す。

 昨春から、コロナ禍で演奏会の中止が相次いだため、「音楽は自然への奉納という原点に立ち返ろう」と、森や寺社での演奏を続けている。

 龍王ケ渕では自作の歌も奉納した。

 ♪ 実りの秋を迎え 村は喜び 龍神さまに 感謝して祈る ♪

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 「歌っていると、ヨシ原の中からヘビが頭を上げ、チョウやトンボが舞い降りてきました。草木や水の反響、鳥のさえずりは他では体験できない。まさに『水鏡』のように静かに自分を見つめ直すことができます」【奈良支局長・堀川剛護】


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 ■人物略歴

荒井敦子(あらい・あつこ)さん

 1954年生まれ。大阪音楽大声楽科卒。82年に「まつぼっくり少年少女合唱団」を結成、国内外で公演を重ねる。わらべ歌を録音し音符で記録する「採譜」という活動で山村を中心に数多くの集落を訪問。2009年、NPO法人「音楽の森」を設立した。93年、サントリー地域文化賞受賞。日本音楽療法学会認定の音楽療法士。著書に永六輔さんとの共著「歌の力」。

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