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前略 金正恩総書記 平和へイメージチェンジを

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9月29日の最高人民会議で施政演説する金正恩総書記=朝鮮中央テレビから
9月29日の最高人民会議で施政演説する金正恩総書記=朝鮮中央テレビから

 意表を突き列車からミサイルを発射したかと思えば、韓国へ向け融和メッセージを送る。北朝鮮がまた揺さぶりだした。金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党総書記はダイエットに励んだのか、ややスリムになり、あの個性的だったヘアスタイルも変えた。長くウオッチしてきた私はその胸中が気になってしようがない。金正恩時代が10年になる。平壌(ピョンヤン)で節目の独占インタビューをと願っているが、まずは一筆啓上――。【鈴木琢磨】

 この8日、満を持して貴国のインターネット宣伝媒体「わが民族同士」にあなたの業績をたたえる特設サイトが誕生しましたね。題して「勝利と栄光で輝く偉大な革命領導の10年」。2011年12月17日に父、金正日(キムジョンイル)総書記が急死、暮れも押し詰まった30日に朝鮮人民軍最高司令官に就任しました。事実上のトップです。まだ20代半ば、もう少し修業を積みたかったはずですが、人生はままならない。父の亡きがらを前に悲嘆に暮れるあなたと妹、与正(ヨジョン)さんの映像を覚えています。あまりにも若く、経験不足でのデビュー。勝利と栄光の歳月だったかどうかはともかく、兄妹二人三脚で踏ん張ってきたな、という印象です。

 あれは8月の下旬のこと。平壌は普通江(ポトンガン)畔のマンション建設現場を視察するあなたの写真を見て、おやっと思いました。刈り上げていた両サイドの髪が伸び、オールバックふう。すでに6月から体重を落としているのは明らかでした。「おやつれになった姿に心が痛む」。朝鮮中央テレビはそんな人民の声も伝えていました。そして9月9日の建国記念日、祝賀パレードに現れたときは雰囲気がそれこそ祖父、金日成(キムイルソン)主席そっくり。デビュー時から面影を宿していましたが、みるみるうち祖父の体形を凌駕(りょうが)していく。健康維持も兼ねていたにせよ、私はご自身の強い意志で減量し、イメージチェンジを図ったとみています。

 私の手元に金日成さんの半生をたどった全3巻の写真集「4千万の太陽」(平壌・灯台社)があります。1969年から72年にかけての出版。最高指導者像の変遷がつかめます。ページを繰りつつ、気づきました。あなたがモデルにしているのは千里馬時代の祖父だ、と。3年に及ぶ朝鮮戦争で荒廃した国土の復興、経済飛躍のため、日に千里(朝鮮の1里は約400メートル)を駆ける伝説の馬になぞらえた増産の大キャンペーン、5カ年計画は2年半も繰り上げて達成したといわれています。人民の中へ入っていく大衆政治家スタイルもできあがっていく。いまなお多くの人民が抱く金日成さんのイメージはこのころの姿でしょう。

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