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衆院選がきょう公示される。
前回から4年を経て、事実上の任期満了選挙である。この間、選挙を経ずに2人の首相が交代し、岸田文雄内閣が今月、発足した。新政権の信任を問うだけでなく、9年に及んだ「安倍・菅政治」に審判を下す場となる。
新型コロナウイルスの感染拡大が国民の安全を脅かし、社会に深い傷痕が残る中での選挙だ。
緊急事態宣言、医療体制の逼迫(ひっぱく)、一斉休校、休業要請、生活支援策など政権のコロナ対応は、政治が私たちの暮らしに直結していることを痛感させた。
格差や分断がいっそう、広がっている。各党が公約で身近な生活課題を重点的に掲げているのも、今回の特徴だ。
コロナで浮かんだ争点
きのう行われた党首討論では、多くの政党が「分配」の必要性を主張した。だが、具体策や財源などについての説明はまだ不十分だ。「ひずみ」を直視し、是正していく説得力あるビジョンを競わなければならない。
公示にあたり、審判の行方と同等にあえて強調したいポイントがある。それは、有権者の「選挙離れ」に歯止めをかけられるかどうか、である。
この10年ほど、日本では国政、地方を問わず選挙における投票率の低下傾向が深刻化している。
衆院選の投票率は12年前の2009年、69%に上った。旧民主党による政権交代が実現した選挙だ。だが、自公両党が政権を奪還した12年は6割を切った。それから2度、いずれも50%台前半と戦後最低水準に落ち込んでいる。
とりわけ憂慮すべきなのは、若年層の低さだ。前回17年、20代の投票率34%は60代の半分にも満たなかった。
議院内閣制を採る他の主要国と比べても、状況は深刻である。
ドイツでは、メルケル首相の後継を決める先月の連邦下院総選挙で投票率は約77%だった。英国の19年下院総選挙は約67%、高い傾向で知られるスウェーデンの18年総選挙は8割を大きく超えた。
一般的に中高年になると、投票率は上がる。だが、20~30代であまりにも低いと大幅な回復は難しくなる。次の世代でも投票する習慣が断ち切られ、負のスパイラルが加速しかねない。
棄権する有権者が増えれば、一定の強固な支持層を持つ政党の得票が重みを増す。政党は偏った世代や所得層の声に耳を傾けがちになる。政治からは緊張感が次第に失われてしまう。
国会がよって立つ民意の信任という基盤も弱体化する。まさに「民主主義の危機」である。
低投票率の背景には、学校での主権者教育のあり方、政治を「特殊なもの」と見がちな社会の風潮、加えて選挙制度など、さまざまな要素が絡み合っている。
だが、まず提案したい。「投票しても変わらない」「どっちもどっちで、選択肢がない」という決まり文句と決別してはどうか。
「選挙離れ」との決別を
私たちの1票は政治や行政、暮らしと密接につながっている。
コロナ禍では政府だけでなく、住民から選ばれた首長の判断も感染対策を左右した。病床確保に先手を打つなど手腕を発揮した知事がいた一方で、東京都は夏以降の「第5波」への反応が鈍く、多くの患者が在宅療養を迫られた。
現役世代や若者が抱く不安を政党が正面から受け止めずに来たことも、選挙離れの一因だろう。政党も、施策の優先度が低かったことを省みる必要がある。
若者らの投票率アップを呼びかけるキャンペーンを展開している市民グループは、関心がある政策をインターネット調査で聞いた。約4万5000もの回答のうち、「現役世代の働く環境を改善」を挙げた人が8割近くに上った。「コロナ対策」「子育て環境の改善」との答えも多かった。
今回は、各党とも従来以上に若者らを意識した公約を掲げる傾向がうかがえる。世代間の配分のあり方について、納得できる具体像を示すべきだ。
コロナ禍はまだ、収束していない。密集を避けるため、選挙運動にある程度の制約が生じることはやむを得ない。
それでも、何が自分にとって「譲れない点」なのか、どの政党や候補の主張に、より共感できるかは十分に選択できる。舌戦をじっくりと吟味し、必ず投票することが、政治を変える一歩となる。
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