「両手タッチしていない」失格の片腕スイマー 共生遠いスポーツ界

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2018年にインドネシア・ジャカルタで開かれたアジアパラ大会で泳ぐ一ノ瀬メイさん=久保玲撮影
2018年にインドネシア・ジャカルタで開かれたアジアパラ大会で泳ぐ一ノ瀬メイさん=久保玲撮影

 ある片腕のスイマーはレース後、「失格」を告げられた。理由は「両手で壁にタッチする」という健常者の競技ルールに外れたからだ。東京オリンピックとパラリンピックの開催にあたって、多様性や共生社会といった理念が盛んに唱えられた。だが、私たちの社会はその理念をどこまで実現できているのだろうか。

健常者のルール強いられ「失格」

 2018年9月、札幌市で開かれた「日本スポーツマスターズ」の水泳競技会。平泳ぎのレースを終えた選手が失格になった。その選手には片腕の肘から先がないにもかかわらず、審判からは「プールの壁を両手でタッチしていない」と伝えられたという。

 日本スポーツマスターズはスポーツ庁や日本オリンピック委員会(JOC)も後援するシニア向けの総合スポーツ大会だ。18年は水泳競技だけで800人以上が参加した。

 主催するのは公益財団法人・日本スポーツ協会。国民体育大会(国体)も手がけるこの団体は、策定した戦略プラン(18~22年)の目標に「誰もがスポーツ文化を豊かに享受できる環境の創出」「多様性の促進」などをうたっていた。

 「目標にある『誰もが』の中に障害者は入っていないということです」。日本パラ水泳連盟常務理事を務める桜井誠一さん(71)は取材にそう語る。「国民体育大会の『国民』は健常者のことで障害者は入っていません。各地の県民大会、市民大会もそうです。国体の代わりにあるのが『全国障害者スポーツ大会』で、別なんです」と指摘した。

 桜井さんは失格となった選手からメールを受け取り、失格の理由などを聞いている。選手は運営を担った日本水泳連盟に抗議したものの、その場では失格は覆らずに「国際水泳連盟の規則、ルールにのっとっているため」との説明が繰り返されたという。

 一方、…

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