「イケメン」「美しすぎる」でいいのか 日本の古いアスリート報道

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足首まで覆う「ユニタード」を着て、東京五輪体操女子個人総合決勝に臨むドイツのキム・ブイ選手(中央)=東京都江東区の有明体操競技場で2021年7月29日、宮間俊樹撮影
足首まで覆う「ユニタード」を着て、東京五輪体操女子個人総合決勝に臨むドイツのキム・ブイ選手(中央)=東京都江東区の有明体操競技場で2021年7月29日、宮間俊樹撮影

 東京オリンピック・パラリンピックは、女性アスリートの活躍とともに、性差別解消に向けたメッセージの発信が印象づけられた大会だった。ただ、メディアの伝え方を巡っては、見た目で人を評価する「ルッキズム」など、競技そのものとは異なる部分に着目したものが存在している。

あからさまな外見の評価は避けるべきだ

元五輪競泳代表 井本直歩子さん

 スポーツ報道とジェンダーについて、発言を続けている元五輪競泳日本代表の井本直歩子さんに現状と課題を聞いた。

 ――「美しすぎる」「イケメン」といった枕ことばで、アスリートが報じられることもあります。

 ◆一般の視聴者や読者が「かっこいい」「かわいい」と感じたり、言ったりすることが問題だとは思いません。私も「この選手はとってもタイプ」と口にすることはあります。ただ本来は、スポーツにおいてあからさまな外見の評価は避けるべきですし、メディアが見た目という主観的な事柄を受け手に押しつけてはいけないと思います。

 男性目線でアスリートを捉えている媒体も存在し、女性のユニホームを肌の露出度が高いものにしようとする競技もあります。テレビのトーク番組などでは、男性に聞かないのに女性には「結婚願望」などを質問する様子がしばしば見受けられます。男性優位社会のゆがみや「女性だから」という偏った固定観念があるように思います。

 ――具体的にどんなマイナスが生じますか?

 ◆「かわいい」「かっこいい」といったルックス面や、私生活ばかりが注目されることで、アスリートとしての実力や素晴らしさが伝わりづらくなります。古いジェンダーの偏見を再生産し続けていては、男女が実力を認め合って、ともに力を発揮していく社会はつくれません。

 ――アイドルとアスリートの区別があいまいな部分があるのでしょうか?

競技性にもっと着目してほしい

 ◆アイドル性のあるアスリートをきっかけに、競技全体が注目されることは良いことです。例えば、卓球も「○○ちゃん」と呼ばれるような人気選手がいて、競技への注目度が上がったのは事実です。ただ、見た目や私生活が過度に取り上げられるケースが散見されます。本来は、その選手が高めてきた競技性がもっと着目すべきです。

 マイナースポーツの報道はルッキズムの傾向が強くなりがちです。一般的になじみの薄い競技は、その面白さも理解されにくいので、外見で人気を集めそうなアスリートのコメントや映像が多用されがちです。

 確かに、作り手がルッキズムを抜きに視聴者や読者に面白く見てもらえるコンテンツを作るのは、とても努力がいると思います。でもメディアの人は「ルッキズムなしでは見てもらえない」と決めつけず、「社会のためにバイアスをなくす報道にしていこう」と心がけてほしいと思います。

 ――現役時代、メディアでの取り上げられ方に違和感を覚えていましたか?

 ◆私自身は…

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