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在日韓国人元政治囚の歩み(その2止) 民主化進み事態動く 「世の中変わったなあ」

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李哲さん、閔香淑さん夫妻は公園をウオーキングするのが日課となっている=大阪市内で2021年10月18日、高尾具成撮影
李哲さん、閔香淑さん夫妻は公園をウオーキングするのが日課となっている=大阪市内で2021年10月18日、高尾具成撮影

 

 韓国情報機関によって「北朝鮮のスパイ」にでっち上げられ、無実なのに死刑宣告を受け、長期の獄中生活を強いられた李哲(イチョル)さん(73)=大阪市在住=は、今も同じ悪夢にうなされる。

 その夢は、身動きのできない死刑囚が一列に並んだ情景に始まる。「執行人が首にかけたロープを引っ張ると、もう一人が死刑囚が立っている椅子を蹴飛ばすのです。そのように次々と死刑執行されて、やがて自分の前まで回ってくるのです。そこで目を覚ますんですが、汗はびっしょり、心臓は脈打ち、もう眠れないんです」

 中央情報部(KCIA)本部の地下取調室からソウル拘置所に移監されて数カ月が過ぎた頃だった。一人の収容者が李さんの房の前を通過する際、視察口から小冊子を投げ込んだ。聖書だった。面会も差し入れも禁止されていた李さんは、日本の看守に当たる矯導官(きょうどうかん)に見つからぬよう布団に隠し、扉を背に夢中で読みふけった。

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