戦後、米国の統治下にあった沖縄の施政権が返還されてから、来年5月で50年を迎える。
節目を前にした衆院選であるが、沖縄を巡る論戦は低調だ。本土の無関心が沖縄との分断を深めることを危惧する。
安倍晋三元首相や菅義偉前首相は、沖縄の気持ちに「寄り添う」と繰り返した。だが実際には、歴代の自民党政権に比べても冷淡な対応をとり続けた。
知事選や県民投票で、米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設計画に反対の民意が再三示された。にもかかわらず、無視して埋め立て工事を強行した。
軟弱地盤が見つかり、実現の見通しが不透明になっても「唯一の解決策」と繰り返すだけだった。埋め立て土砂を沖縄戦の戦没者の遺骨が眠る地域で採取する計画を立て、批判を浴びても取り下げなかった。
県民の怒りは、国政選挙の結果にも表れている。第2次安倍内閣以降、与党は国政選挙で圧勝し続けたが、沖縄ではほとんどの選挙区で負けた。
それでも、政府と与党はその民意を受け止めてこなかった。
沖縄は県民の4人に1人が犠牲となった凄惨(せいさん)な地上戦を経験しながら、1952年に日本が独立を回復した際、取り残された。本土復帰にあたっても、経済格差や基地負担という重荷を背負わされた。
復帰に先立つ71年、衆院は政府に「米軍基地の速やかな将来の整理縮小の措置」を求める決議を全会一致で可決した。
しかし、半世紀たっても、国土面積の約0・6%の沖縄に全国の米軍専用施設の7割が集中する状況が続く。
岸田文雄首相は所信表明演説で「対話による信頼を地元の皆さんと築き、基地負担軽減に取り組む」と述べた。ただ、解決への熱意は感じられなかった。
米中対立が激化する中、沖縄はその最前線に立たされている。だが、それが過重な負担を押しつけ続けることを正当化する理由にはならない。
米軍は世界規模で部隊配置などの見直しを検討している。安全保障環境の転換期であり、日米の役割や任務の分担なども変わる可能性がある。
政府は、米軍施設の配置や日米地位協定の見直しを含め、沖縄の負担軽減を提起すべきだ。「米国がのむはずがない」という先入観にとらわれた思考停止から抜け出さねばならない。
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