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酔いどれクライマー・永田東一郎伝/3 めちゃくちゃ根性ある

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1978年7月、後立山から日本海への縦走途上、唐松岳頂上に立つ永田東一郎さん(左端)。右端は横田光史さん。バックは剱岳=東大スキー山岳部OB提供
1978年7月、後立山から日本海への縦走途上、唐松岳頂上に立つ永田東一郎さん(左端)。右端は横田光史さん。バックは剱岳=東大スキー山岳部OB提供

 永田東一郎さんの東大スキー山岳部の2年先輩、山本正嘉さんの言葉が耳新しかった。「僕が山で彼といたのは(部員全員がそろう年2回の)合宿くらいなんですけど、『こいつ、めちゃくちゃ根性あるな』と思ったのをよく覚えています」

 根性という言葉を聞くのは、いつ以来だろう。「めちゃくちゃ根性ある」。あのころ、運動系の人間にとっては、これ以上の褒め言葉はなかったし、自分の中に常に抱えている言葉だった。暑い夏、急坂であえいでいるとき、真冬、胸まで埋まる雪のラッセルでもがいているとき、「おい、根性出せよ」と声に出さず自分に言い聞かせる、そんなおまじないだった。

 ところが、どういうわけか1980年代半ばごろから、少し恥ずかしい言葉になり、あまり口にすることはなくなった。テレビで「巨人の星」や「柔道一直線」を見て育った永田さんや私の世代にとって「ど根性」は当たり前のスローガンだったが、「天才バカボン」を経て、「じゃりン子チエ」「クレヨンしんちゃん」あたりで、何となく笑いの対象になってしまった。時代の流れか、運動を嫌う書斎派が行動派をからかう際の一つのキーワードになった感があった。体罰や精神論に絡められ、忌み嫌われもした。…

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