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砲丸の新星 福岡大のアツオビンを目覚めさせた「代理経験」 

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陸上の「博多の森カーニバル」で砲丸を投げる福岡大のアツオビン・ジェイソン=博多の森陸上競技場で2021年10月10日、徳野仁子撮影
陸上の「博多の森カーニバル」で砲丸を投げる福岡大のアツオビン・ジェイソン=博多の森陸上競技場で2021年10月10日、徳野仁子撮影

 心理学には、自分はできるという「自己効力感」を生み出す要素として、他の誰かが達成したことを観察することによる「代理経験」がある。いつも同じ練習場にいた4年生の「児玉さん」が東京オリンピックで走る姿に、後輩の1年生が自身に飛躍の可能性を感じた。現役学生のオリンピアンが33年ぶりに誕生した福岡大陸上部に、殻を破ろうとする流れが生まれている。

 児玉さんとは、陸上女子400メートルリレーに第2走者として出場した児玉芽生(めい、22歳)。1988年ソウル大会女子走り高跳びの佐藤恵さん(55)以来となる現役部員での五輪出場を果たし、胸に日の丸をつけて東京・国立競技場のトラックを駆け抜けた。入学して4カ月だった男子砲丸投げの有望株、アツオビン・ジェイソン(19)はテレビ画面越しにその姿を見た。「同じ学生なのに、世界のトップと戦ってすごい。刺激をもらった」

指導者3人との出会い

 ガーナ出身の父ベンジャミンさん(44)と日本人の母芳恵さん(49)の間に生まれたアツオビンは身長188センチ、体重96キロ。大阪市立墨江丘中で砲丸投げを始め、3人の指導者に出会ったことで成長してきた。

 「日曜日に部活動がない」との理由で選んだ中学の陸上部は、砲丸投げで元中学日本記録保持者の橋口徳治教諭(36)が顧問を務めていた。アツオビンの体格を見て素質を感じたという橋口さんに勧められて砲丸投げを始めたものの、なかなか練習に身が入らなかった。2年生の秋、橋口さんに近畿地区の有望選手が集まる合宿に連れていかれた。「一生懸命に頑張っているトップの選手たちと同じ空気感を味わうことで変わると思った」と橋口さん。そこで練習し、まったく歯が立たなかったことを鮮明に覚えているアツオビンは、うなだれて合宿から帰る車中で決意した。「『才能あるのになんでやらへんねん』…

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