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第49回衆院選

岸田文雄首相が衆院選を10月19日公示、31日投開票で実施すると表明。短期決戦の選挙戦となります。

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視点・総選挙 福島の10年 「対話」を仕切り直す時=論説委員・永海俊

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東京電力福島第1原発を視察する岸田文雄首相。左奥は3号機=福島県大熊町で2021年10月17日午前10時(代表撮影) 拡大
東京電力福島第1原発を視察する岸田文雄首相。左奥は3号機=福島県大熊町で2021年10月17日午前10時(代表撮影)

 東京電力福島第1原発事故から10年の節目に迎えた衆院選である。各党は公約に福島の復興を掲げてはいるが、残念ながら大きな論点にはなっていない。

 政府の復興政策の力点は、従来の帰還促進から、新しい住民の移住支援に移りつつある。帰還の動きが頭打ちの傾向にあるためだ。

 そうした中で課題となっているのは、帰還した住民が安心して暮らせる環境の整備だ。

 古里に戻った住民には高齢者が多い。かつての友人や近所の人と離ればなれになった上、移住してきた人との関係をうまく築けず、孤立感を深めている人が少なくない。

 移住を促進して人口を増やし、産業を興せば、自治体として形の上では復興を果たしたことになるだろう。だが、コミュニティーの再生が進まなければ、住民が置き去りにされる。

 復興政策は主に自治体の首長らとの協議で決まり、当事者である住民の声は十分に反映されてこなかった。

 たとえば今年、第1原発で発生する処理水の海洋放出が決まったが、漁業者の反発は収まっていない。政府が「関係者の理解なしにはいかなる処分も行わない」と約束していたのに、頭越しに決定されたからだ。

 帰還困難区域については、希望者全員が2020年代のうちに戻れるように避難指示を解除する方針を示した。だが、多くの住民が望む全域の除染は見通しが立っていない。

 いずれも政治家が現地に足を運び、対話を尽くした上で判断すべき事柄だが、対応が十分とは言えなかった。

 第1原発が立地する福島県双葉町から埼玉県加須市に避難している吉田俊秀さん(73)は「住民ごとに課題はさまざまだ。政治家は住民の声を直接聞いてほしい」と訴える。

 吉田さんは避難者でつくる「双葉町埼玉自治会」の会長を務める。年1回、町幹部らを迎え、復興について意見を交わすが、そうした場に政治家が来ることはないという。

 福島の問題は終わっていない。むしろ復興政策が曲がり角に差し掛かり、新たな課題が浮上している。解決への道筋をつけることは政治の責任である。

 まずは対話を仕切り直すことが必要だ。目指す地域像を、政府と自治体、住民が共有することから始めなければならない。

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