新型コロナウイルスの感染拡大で孤独・孤立の問題がクローズアップされた。
衆院選では与野党がコロナ対策や経済政策を競い合う一方、この問題の議論が十分になされているとは言いがたい。
コロナ下で非正規労働者やフリーランスの人が雇用の調整弁として職を奪われ、生活に困窮するケースが相次いだ。正社員に比べ孤立しやすく、公的な支援が十分に届いていないことも浮き彫りになった。
昨年は11年ぶりに自殺者が前年を上回り、今年も増加傾向を示している。コロナ不況の影響で、望まない孤独や社会的孤立が深刻化したことが要因の一つとして指摘されている。
菅義偉前首相は2月、対策にあたる専門部署を内閣官房に新設し、担当相を置いた。しかし、実態調査など本格的な取り組みはこれからだ。
生活スタイルの変化に伴い、家庭や職場、地域でのつながりが薄れ、将来に不安を覚える人はコロナ前から増えていた。
取材を通じて、あるシングルマザーの存在を知った。
夫の暴力で離婚し、実家に戻って親や子供の世話をしながら家計を支える。昼と夜の仕事を掛け持ちし心身ともに疲弊していた。だが、周囲の偏見を恐れて助けを求めることができず、育児や介護などの行政サービスも利用していなかった。
背景には、困難な状況を「自己責任」と見なしがちな風潮が近年、高まっていることがある。しかし、孤独・孤立は社会の問題と捉えるべきだ。
自殺対策が参考になる。長らく個人の問題とされてきたが、2006年に対策基本法が施行され、社会的な問題と位置付けられた。国と自治体に対策の実施が義務付けられ、国民の理解も進んだ。
コロナの感染状況が落ち着き始め、孤独・孤立の問題が見えづらくなる恐れがある。だが政治は、苦しんでいる人の存在を忘れてはいけない。
なぜ、つながりが絶たれたのか。どのような環境に置かれ、何を求めているのか。まず、現状を正確に把握することが必要である。
「SOS」を出せなくなっている人々の声に耳を傾け、手をしっかりと差し伸べるのは政治の役割のはずだ。危機感を緩めず、着実に対策を進めなければならない。
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